2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2014年8月26日

 ポロシェンコ政権の影の主役はトゥルチノフ最高会議議長。昔の秘密警察の長官で、以前KGB系の連中をすべて切り、米CIAと英SISのノウハウを入れて新しい秘密警察をつくった。米国との裏の連絡はこの人物が担い、空爆を決定したのも彼だ。

 この問題のケリをつけるのはプーチンだろう。取り引きする相手はウクライナでなく、オバマだ。ロシア人やロシア系だと思っている人たちへのジェノサイドが起きたりすると、軍事介入もありうるが可能性は低いだろう。だらだらと今の状況が続くはずだ。

 落としどころは簡単で、ウクライナを連邦制にすればよい。東部、南部については自己決定権を与えるが、外交、安全保障はキエフ政権が担う。独自軍の保有や独自外交は認めない。ただしロシアが連邦制を提案し、ウクライナはこれを拒否しているので、連邦制でなく別の名をつけないといけないだろう。

 この軟着陸を阻害する要因は、率直にいうとお互いにまだ殺し足りないことだ。これ以上犠牲が出るのは嫌だとお互い思わないと、和解は成立しない。満足のいく犠牲者の数がどのぐらいかというと、定量的には表せない。ある国では何十人だが、ある国では何万人。時期によっても変わる。そのラインに達したとき、和解は成立する。

 これは両者とも悪。毒ヘビ対毒サソリの戦いなので、日本は加わらないほうがよい。米国が来させるなと言っているようだが、プーチンは来日させるべきだ。来させて「おかしいことをしている」と文句を言えばよい。逃げる必要はない。それと現実を見据える必要がある。オバマはじきにいなくなるが、プーチンはあと10年はいる。

 ただしこの外交ゲームに入り過ぎてもいけない。日米同盟の基本線は崩す必要はない。北方領土や対中牽制のほうがよっぽど大切だ。(談)

[特集]ウクライナ情勢を読み解く

WEDGE9月号 OPINION.1「ウクライナ危機」の実相とプーチンの思惑
・小泉 悠(財団法人未来工学研究所客員研究員)
・佐々木正明(産経新聞社モスクワ支局長)
・廣瀬陽子(慶應義塾大学総合政策学部准教授)
【インタビュー】
・亀山郁夫(ロシア文学者、名古屋外国語大学学長)
・佐藤 優(作家、元外務省主任分析官)*本記事

 ◆Wedge2014年9月号より







 

 

  


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