聞こえないふりをしてやり過ごしましたが、「いよいよ近いな」と感じました。
それまで息子は、「お父さん」とか、ときには「おとん」と私のことを呼んでいました。
しかし、いよいよ「おやじ」と呼ぶ時期が「近づいてきた」のです。
そして、1か月後くらいに息子は少し緊張した様子と、か細い声で直接私に言いました。
「……おやじさぁ……」とね。
私は「なに?」と気づかぬふりを装いながら息子に返しました。
息子は話が終わると、安堵したのか肩が「ホッ」と小さく揺れたように感じました。
「おやじ」と呼ぶことで、自分とおやじとの距離感覚を試し、自分の成長を確かめる時期だったのだろうと思います。
その後は、「おやじ」と「おとん」と「お父さん」をその場に応じて使い分けていましたが、今は息子の3人の子どもたち(つまり私の孫)とともに、私のことを「ユーくん」と呼んでいます。
子どもが大工さんになりたいワケ
そうそう、「お父さんの背中」で思い出したことがあります。
学校の飼育小屋づくりで子どもたちと触れ合いながらモノづくりをすることの楽しさの味をしめたお父さんたちは、今度は余裕教室を改造して低学年用の図書室をつくり始めました。
余裕教室をお父さんたちが改造した「ごろごろとしょしつ」で読書をする子どもたち。1994年