息子の不祥事を聞いたチェン氏は…
チェン氏の息子、ジェイシー・チャン(32歳)容疑者は拘束されると8年にわたり大麻を吸ってきたことを認めた。そのためチェン氏は息子のために東奔西走する羽目になった。警察はチェン氏が息子に贈った豪邸から250に分けた大麻を発見し、チャン氏を拘束した。警察はもとからジェイシー容疑者に目をつけ監視を続け、チェン氏が北京を離れたときに拘束に踏み切った。
身柄拘束の3日前にチェン氏は息子の不祥事を耳にして政府指導部にチャンネルを持つ富豪や全人代代表や政治協商委員の友人の間を駆け回り、もみ消そうとさえした。しかし、中国ではチェン氏が「中国麻薬禁止宣伝イメージ大使」から身を引いていないことへの不満がある。この称号は2009年に公安部の麻薬禁止委員会事務局(中国名は国家禁毒委員会弁公室:筆者)が与えたもので、この時まさに周永康(党籍をはく奪された初の政治局常務委員)が政法系統(警察・司法・検察を統括する部門)を牛耳っていた。チャン容疑者は投獄される可能性が高く、市場価格1億5000万元(日本円で約20億円)の豪邸も没収されるかもしれない。彼は勢いに乗り意気揚々だったが、習近平は「虎退治(大物政治家の汚職取締り)」で彼に与しなかった。多くの人は彼が中国の複雑な政商政治に巻き込まれたと見ている。
楊、曽、董という「芸能界の鉄の三角」は緊密で、チェン氏は2年前にその董平氏による「ポリス・ストーリー2013」で警官を演じた。映画の撮影が始まった時には周永康氏はまだ捕まっておらず、公安部から支援を得た。当時の部長は孟建柱氏だったが、副部長だった李東生氏は江沢民派閥で周永康氏子分の筆頭格であり、既に更迭され、捜査されている(因みに李副部長は中央テレビ副局長歴任経験あり)。
楊受成氏とチェン氏のビジネスは各地に広がり、マンション(02年)やマカオの英皇娯楽ホテル経営(06年)にも乗り出した。2008年には楊氏と軍と関係が深い保利集団傘下の博納影業社と共に中国で博納英龍社を開設し、チェン氏が董事長になり、範冰冰や袁泉などの芸能人を呼び寄せた。彼が楊氏と設立した「成龍英皇映業有限公司」はチェン氏主演の「新ポリス・ストーリー」や「プロジェクトBB」、「新宿インシデント」を生み出した。しかし、昨年3月にチェン氏はこの株式を英皇に売り渡し、会社名も変え、ホームページも削除された。なぜ旧友と袂を分けたか説明はない。