2024年11月21日(木)

対談

2014年10月2日

木下:そうなんですよね。今の地方の富裕層は本当に良いモノを知っているので、地元百貨店の品揃えではもう満足しなくなっている。消費地に出て行って消費をするというライフスタイルが確立してしまった。北陸新幹線の開通に関しても「これで活性化する」といまだに言われていますが、そんな単純ではない。全国各地の新幹線駅周辺を見れば分かります。普通に東京からの日帰り可能エリアに完全になってしまうわけですから、個人の面でも、企業の面でも、流入よりも吸い上げられる危機感を優先して持ったほうがよいだろうと思うわけです。

飯田泰之さん

飯田:利用する側にとって交通網の整備は本当にありがたい。さらに大消費地にとっては新規顧客のチャンスというわけですが。その一方で、「地元のためになる」を額面通りに受け取ってはいけない部分もあるでしょう。

木下:そうなんですよ、何といっても便利ですからね。「国」という単位で見れば、お金を持っている人の移動が活発になって消費なども喚起され、企業活動が効率化されていくことはメリットですが、「地方」にとっても同じ構造とは限らない。

飯田:交通手段の発達によって、都市への集中はますます進みやすくなっていますからね。

木下:しかも今後はさらにより大きな都市への集中がどんどん進むでしょう。危機感を持たなければいけない人たちが、今は持っていないんです。

地域活性化とは「貧困の解消」である

飯田:インターネットが普及し始めたときに、「これで地方でも東京にいるのと同じように仕事ができる」などとさかんに言われました。

木下:はい、リモートワークでどこでも仕事できるという考え方ですね。

飯田:実際は、ほぼすべての実証研究が正反対の結論を出しています。リチャード・フロリダなどが指摘するところですが、知的生産やクリエイティブと呼ばれるような職種ほど、同じような職種の人たちが集積している場所でないとできないことがわかってきています。

※リチャード・フロリダ:都市経済学者。「クリエイティブ・クラス」に着目した地域発展論を提唱。邦訳書に『クリエイティブ都市論』(ダイヤモンド社)など。


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