2024年11月22日(金)

対談

2014年10月2日

木下斉さん

木下:まず個人的なレベルで言えば、お金も時間があるから当然ですけど、やはり富裕層ほど移動が多くなります。知り合いの地方在住者でも、空港の圏内に住んでいる人の中には、年間の交通費が300万円を超えるという方もいます。彼らはちょっとした集まりがあれば、すぐに東京に出てくる。東京にセカンドハウスをもって行き来している場合もあります。国内なら飛行機だったらまぁ1時間半くらいですし、新幹線でも5時間あれば東京などに出てこれる。お金に余裕があって、消費意欲がある人の財布ほど、多様な消費する場が集積している消費地に吸い寄せられてしまう。

 企業などの場合にも、新幹線が開通すれば、それまで分散して支社・支店を設けていたものを統廃合してしまいます。出張で行き来できるような範囲にわざわざ事務所を固定的に置くことはしません。ましてや地方は市場縮小のプロセスにあるので、より効率的な配置をしていく。東京資本の企業の支店勤務者は地方では高所得者層になり、地元消費でもそれなりのポジションを占めていたのが、一気に薄くなってしまう。事務所機能なども新幹線などの高速移動網で接続された大都市に、一気に吸い上げられていく。

飯田:交通網の発達により、人とお金が地方から大都市に吸い寄せられてしまう「ストロー現象」は以前から指摘されています。近年の典型例は東北新幹線でしょう。割を食うかたちになったのが盛岡と仙台です。

 僕自身は、4時間以内の移動時間だったらなるべく電車で動きたいんですよ。飛行機は本数も限られているし搭乗前に余分な時間を40~50分は取られてしまうこともある。それに比べると新幹線はギリギリに飛び乗ることができますから。『Wedge』も新幹線で毎号読んでいます(笑)。

木下:「買っています」じゃないんですね(笑)。地方の方でもグリーン車に乗っているから読んでいるという方は多いですね。

飯田:まさに地方の富裕層が、東京に出てきて消費してしまう。これは地元経済にとっては非常に深刻な問題です。日本におけるお金持ちはいわゆる名家や地元財界人、医者。そういう人たちが、地元のデパートの外商部を家に呼ぶ、そんな文化は交通網の発達により、おそらくほとんど消滅してしまいました。お客が少なければ品揃えも薄くならざるを得ません。その結果ますます地元百貨店よりも東京や大阪に行って消費ということになるわけです。


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