2024年7月16日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年10月6日

 中国にとってもう一つの面白くない動きは、今週、モディがスワラジ外相をミャンマー、シンガポール、ベトナム歴訪に送り出したことだろう。ムカルジー大統領も、習の訪印と同時期に訪越する。インドは中国のこともあって、東南アジアとの安全保障関係を強化しつつあり、最近ではインドの軍艦がフィリピンに寄港、8月には中国に近いベトナムのハイフォンで印越海軍が合同演習を行なった。ベトナムとは、潜水艦操縦の訓練、軍用機の修理、巡視船の売却でも協力しており、さらに、今月、中越が領有権を争う海域の油田について、インドの国営石油企業、ONGCの権利が更新された。東南アジアとの関係構築で中国の後塵を拝してきたインドだが、中国を強く警戒するベトナムはそうしたインドにとって格好の突破口だ。

 なお、9月に、モディ首相は訪米する。国連総会に出席すると共に、オバマ大統領と会談し、シン政権下で冷却した印米関係の修復に努めることになるだろう、と報じています。

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 上記は、モディ印首相が日本、ベトナム、豪州との外交に乗り出したことと、その意義についての解説記事です。「ミドル・パワー諸国」の協力という表現は気に入りませんが、全体としてはバランスの取れた良い記事です。

 モディ首相は就任後ブータンを訪問しましたが、主要国の中では最初に日本を訪問しました。グジャラート州首相の時、2度来日していますが、日本との関係を重視している証左でしょう。

 インドはチャンドラ・ボースを顕彰し、東京裁判ではパル判事は日本無罪論を展開しました。モディ首相はそれにも触れましたが、「歴史問題」は日印間には全く存在しません。安倍総理もモディ首相とは心おきなく話せたのではないでしょうか。

 日印共同宣言も全体としては大変いいものが出来たと言えます。今後日印経済関係、防衛協力等が進むことが予想されます。インドは親日的であるのに、日本の投資や企業進出が低調だったのは、電力などのインフラの不足とインドの官僚主義が障害であったからでしょう。モディ首相の自由主義的経済政策が、これら問題の是正につながることを期待します。

 インドが東南アジア・豪州方面への外交を強化してくることは歓迎できます。

 対中国については、日印関係の強化がそれ自身で対中けん制になります。モディ首相が、東京の講演で、「拡張主義」ではなく「開発」をと言ったのは、名指しはしていませんが、対中批判でありましょう。

 なお、米国は、グジャラート州でヒンズー教徒がイスラム教徒を襲撃した時にきちんと対応しなかったとして、モディへの査証発給はしていませんでしたが、首相になったのでその措置を止めました。9月にモディは訪米し、米印関係は強化されることでしょう。

  


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