米国のコンサルタント会社、サミュエルズ・インターナショナル・アソシエイツ上席研究員のスーラブ・グプタが、CSIS Pacific Forumのサイトに8月14日付で掲載された論説において、米印関係について過大な期待を持つことを戒め、インドの自立性を尊重し、対中牽制の視点ばかりから米印関係を見ないよう助言しています。
すなわち、米印戦略パートナーシップは、最も過大評価されている2国間関係である。1990年代、今回と同じく中道右派政権が出来た時に、インドと米国は「自然な同盟国」と宣言された。今、こういう誇張は、捨てられるべきである。モディ首相は9月訪米するが、価値観と国益の違いが成果のない関係につながっているとの認識が必要である。過大な期待と過小な成果は良くない。それは、インド・太平洋地域での安定的な地政学的均衡という両国の基本利益の追求も妨げる。
2極世界の終焉とインドの市場経済化により、民主主義の価値共有が両国を劇的に近づけるとされた。米印は中国のアジア支配阻止、テロ防止、不拡散、自由民主主義推進、貿易秩序及び航行の自由の確保などで共通の利益を持つとされた。
しかし、そのほとんどが実現に至っていない。ここ2~3年、印中のハイレベル接触は印米間のものより多い。米印は貿易、環境などの分野で正反対の主張をし、民主主義推進でのアプローチも違う。米印間の違いが目立ってきている。
米印核合意の輝きの中で、米印の戦略・防衛分野の目標が考えられた。例えば、イランの核問題対処、中国の海洋進出対抗、災害救援活動、さらに基地提供などである。しかし、これもほとんど実現していない。インドは高度な演習参加は断り、米軍司令部への人員派遣はせず、兵站などでの基本合意も断り、ロシア製武器の購入を続けた。キティ・ホーク退役空母を購入する機会も逃した。15億ドルの米軍事装備の売却くらいしか成果はない。
しかし、こういう失望は、米印関係強化論者の信条を弱めてはいない。旧政権下と違い、新政権で軍事協力は進むとされている。米印両国は、海軍間の情報交換を含む2005年の防衛枠組み合意を再活性化すべきであると言われている。しかし、米印軍事交流は、インド国防省での文民と軍人の関係のあり方により、阻害されている。
過去の教訓を踏まえないやり方は、同じ誤りの繰り返しになる。問題は、条約上の同盟国ではなく、パキスタンの敵国ではあるが、友好国以上の国であるインドと、どういう防衛上の関係を米国は持つのかということである。