寛大な核合意、武器技術供与でのインド優遇もあまり成果を挙げなかった。中国の台頭は米国との関係強化への理由になるが、インドの歴代政権は、中国に反対するよりそれに同調する方が賢明であるとみなしてきた。インドは習近平の「新しい大国関係」の核心的利益論を尊重しているように見える。インドと中国がアジアで競争関係にあると信じ、米印両国の利益はアジアで合致すると安易に想定することは間違いであろう。
米印関係は、中国との関係の視点ばかりから見るべきではない。米印軍事協力を、力の共有とバランスに基づくインド・太平洋地域の多数国間安保協力に資する方向に持っていく方が良い。米印関係では、自立と連携のバランスをとっていく必要がある、と論じています。
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この論説の指摘は、米印関係の現状に即したものと言ってよいでしょう。米印関係が何故現在のような状況であるかについては、インドは大国であり、非同盟主義の政策を長年取ってきた点が大きく、米印関係が同盟のような関係になりうるとは考えない方がよいでしょう。インドは、BRICSの一員として、中露とも一緒に開発銀行を作っています。民主主義という共通の理念でまとまる力と、経済の発展段階が似ているということでまとまる力は、甲乙つけ難く、それは、状況によるのでしょう。
日印関係についても、インドは国益を独自に判断します。日本と対中共同戦線を簡単にとってくれるとは考えない方が良いのではないかと思います。グプタの論は、その意味で日本にとっても参考になります。ただ、インドの世論は親日的ですから、過大な期待は戒めつつも、日印関係強化には努めるべきでしょう。その点、今般の日印首脳会談は、安全保障面、経済面でバランスの取れた連携強化を打ち出すことができたと評価できます。
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