2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年10月7日

 米国としては、この安全保障上のパートナーであり、民主主義の光である台湾の経済状況を黙って見ているだけであってはならない。TPPやFTAの枠組みの中に台湾を引き入れ、二国間では米台間で投資協定を結ぶなど、台湾を経済的孤立から脱却させるように尽力すべきである、と論じています。

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 上記論説は、台湾経済は中国に依存しすぎており、このような関係を続けることは台湾の「現状維持」にとっても危機的状況を招きかねない、と警鐘を鳴らしています。このような指摘は至極もっともなものです。

 これまで、米国人専門家の中では、本論評の言うように「台湾関係法」との関連で、安全保障面での台湾の「現状維持」を論じるものが多く、中台間の経済関係に目を向ける人は少なかったので、ウイルソンによる本論評は注目に値します。

 専門家の一部には、台湾の一人当たりGDPは20,000ドルを超えたので、すでに先進国の水準に達しており、経済の成熟化に伴い成長率が落ちるのは自然の理である、という人もいます。しかし、輸出、対外投資の対中依存度の極端な大きさ、台湾経済のファンダメンタルズの悪化等を考えれば、その異常さは容易に理解できます。

 中国の対台湾政策の手法は、台湾人の言う「軟土深掘」です。相手の土が軟らかい間は、どこまでもこれを掘り崩そうとします。コンクリートのように固いものにぶつかった時に、初めて方向転換します。今日の中国は、台湾に対し軍事力を直接行使することなく、経済力と人的な往来を通じて、影響力をじわじわと拡大してきました。そのうち熟柿が落ちるように落ちてくると考えていたかもしれません。少なくとも、今年3月の台湾における大規模学生抗議活動まではそう考えていたにちがいありません。

 このような中国の対台湾政策に対し、米国が取るべき方策は、台湾の対中国経済依存度を低下させるために、TPPやFTAの枠のなかに台湾を取り込むことである、との本論評の趣旨は、日本にもそのまま当てはまります。日本政府はすでに台湾のTPP参加に歓迎の意を表しており、また、FTAについては長年の課題として検討を進めてきた経緯がありますが、日台間でこれが締結されれば、その象徴的意味は極めて大きいと言えるでしょう。

  


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