一方、アメリカ人に既に馴染みの日本酒の一例として挙げられたのが、タイクー(TY-KU)だ。日本にはそのような名前の商品はない。アメリカ人がアメリカ人のためにアメリカで開発した商品である。タイクーをカクテルに使用する店が、ニューヨークやロサンゼルスを中心に増えている。まるでシャンプーか香水のような斬新なボトルデザインが人々を惹き付ける要因だが、それ以外にも誰でも発音しやすい商品名に人気の秘密がある。「店でオーダーしやすい、これがアメリカでの売上につながる」と前出の大手酒造卸会社の担当者は語る。
秋田の酒、高清水はアメリカ市場ではしみずの舞と名前を変え、そのサブタイトルとして「ピュアダーク」「ピュアダスク」といった英語名を付けた商品を流通させている。しかも「日本酒らしさ」から意識的に離した形や色のボトルで市場に出回っている。
米国市場向けのパッケージに変えた高清水
また、一般的なバーだけでなく、日本酒が活躍する舞台は、日本食レストランにとどまらない。アメリカでは、韓国、中国、ベトナム、タイなどのエスニックなレストランでも日本酒を扱うようになっている。
かつてワインはフレンチレストランで嗜むものだった。しかし、今や料理のカテゴリーを問わず楽しまれるようになり、遂に13年、アメリカでのワイン消費量が母国フランスを追い抜いた。果たしてアメリカの日本酒消費量が日本を抜く日はくるだろうか?
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。