2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2014年10月15日

 受講した売り場スタッフには明らかな変化が見られた。まず、日本酒の知識を得たことで自信をもって商品を顧客に薦めることができるようになった。より日本酒の棚をアピールしようと配置換えや売り場面積拡大を行った店舗もあり、結果的に売上が20%以上伸びた例もあったという。

 上野さんは現場の教育と同時に、日本酒を造る側の意識改革も必要だと強調する。「日本酒を何百年にわたって造ってきた伝統とこだわりは理解できる。しかし、農耕民族である日本人と狩猟民族のアメリカ人では、味覚が決定的に異なる。飲む相手が日本人ではない以上は、アメリカ人に『わかりやすい味』の商品を開発しなければならない」。

 そして、「日本酒の認知」を得た上で、「開眼」へ、さらに本来の日本酒の繊細な味も「堪能」できるように段階を経ていくのが、日本酒のアメリカ市場浸透への道筋だと語る。

求められるカスタマーフレンドリー

 米系大手酒造卸会社の日本酒担当者も、日本酒メーカーは既成の概念を超えて挑戦すべきだと訴える。

 「オーストラリアや南米産のワインのラベルを見てほしい。フランスワインのラベルにはシャトーの絵にフランス語が定番だが、新参者であるニューワールドのワインのラベルには抽象的なアートが描かれていることが多い。それは消費者に対してインパクトを与えるためのマーケティング戦略なのだ。アメリカ市場で認知度を獲得するためには、日本酒も是非カスタマーフレンドリー(消費者に親しみやすいもの)であってほしい」

 カスタマーフレンドリーであることは、価格面にも求められる。アメリカの人気スーパーチェーン、トレーダージョーズは10年以上前に1ドル99セントのカリフォルニアワインを売り出した。そのブランド「チャールズショー」は、「コストパフォーマンスに優れたワイン」として人気を集め、それまでワインを日常的に飲む習慣がなかった人々のワイン熱に火をつけたのだ。


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