輸出が拡大している日本酒を、さらに世界の消費者に親しんでもらうためには何が必要か。
日本酒の輸出が伸びている。2003年、39億円だった輸出金額が、10年後の13年には105億円と2.7倍に跳ね上がった。輸出相手国の中でも長い間トップに君臨し、さらに毎年ほぼ右肩上がりに増えているのがアメリカである。アメリカへの輸出金額は、全体の37%を占める(13年財務省貿易統計より)。
しかし、かつて日本酒に無知だったアメリカの消費者は、スーパーマーケットでも「未知なる商品」に手を出すことをしなかった。店の人に聞いても的を射た回答が得られない。
ホールフーズで始まった売り場従業員への教育
「ここ20年で、吟醸酒などの上質な酒の日本からの輸入が増加した。しかも、日本人が少ない地方のスーパーマーケットでも日本酒が売られている。残念なのは、そういう地方の店舗では回転率が悪いことだ。せっかく美味しい日本酒を店に並べても売れなければ古くなる一方で宝の持ち腐れ」と語るのは、4年前にロサンゼルスに創設されたサケ・スクール・オブ・アメリカの副代表、上野俊男さんだ。同校は、「買う人に興味をもたせるには、売る人を教育するしかない」と、店の現場に立つ従業員を含めて、アメリカ人対象に日本酒の教育に乗り出した。
14年4月には、ハイエンドなスーパー、ホールフーズ・マーケットから35人の従業員を迎えて、歴史、原料、製造法、ラベルの読み方、試飲セッションに至る集中授業を行った。9時から16時までの講義を受けた1週間後、生徒たちはサケアドバイザーの試験に臨んだ。合格者は35人中32人だった。
「店舗によっても異なるが、ホールフーズには多い所で30種類ほどの日本酒が並んでいる。さらに多くの日本酒を扱ってもらおうと、まず売り場担当の6人の従業員に講義を受けてもらった。それが好評で、テキサスの本社と話が進み、一気に35人を受け入れることに。引き続き、ハワイや北カリフォルニア地域の従業員対象の講義の準備を進めている」と上野さんは手応えを語る。