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World Energy Watch

2014年10月22日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

 案件を購入する投資家にすれば、定期預金とか国債よりも高い収益が保証され、銀行から借り入れを行っても十分利益が得られる投資になる。事業を行い、関係者が収益を上げることは、悪いことではない。しかし、FITの場合には収益の出所は電気料金だ。原子力発電所が停止し、燃料代による電気料金の上昇が続くなかで、電気料金をさらに上昇させ、一部の事業者と投資家に高収益を保証する政策はありなのだろうか。制度設計を行った時点で、欧州での問題点の多くは明らかになっていた。そんななかで、IRR8%、実際には10%以上にすることができるという高収益を消費者の負担で事業者に認めた当初の制度設計に疑問があったと言うしかない。

再エネ導入効果に関する誤解

 民主党の福山哲郎議員は、14年10月7日のブログ(http://www.fukuyama.gr.jp/diary/)で次のように主張している。「再生可能エネルギーだけで九州全土の電力需要をまかなえる日がありうるということは喜ばしいことではないでしょうか。全国で見れば、固定価格買取制度によってわずか2年で原発約15基分の発電量に相当する再生可能エネルギーが設備認定されています。今すぐこれらが接続されるわけではありませんが、あと5~6年かかりながらもしっかりと接続していけば、その分だけ、高い化石燃料を買わずに済むので国富の流出を抑えることができ、CO2排出の抑制にも貢献し、地域でお金が回ります」。

 この理解は全て間違っている。再生可能エネルギーだけで、九州全土の電気を賄えるようになれば、風が吹かない雨の日に備えて大容量の火力発電設備を維持しておく必要が出てくるが、再エネにより火力の稼働率が低下するために、電力会社はやがて赤字の設備を維持できなくなる。発電設備量の約40%が風力と太陽光発電設備になったドイツで今起こっている問題だ。

 ドイツは電力が自由化されているために、競争に晒される電力会社は稼働率の下がった火力発電所の閉鎖を続けている。このために、停電を恐れるドイツ政府は発電設備を建設すれば、料金を支払う「容量市場」を導入する予定だ。九州全土の電気を全て再エネが賄う日が来れば、送電線の増強費用の負担もある九州の電気料金はとんでもないレベルになっており、多くの製造業は九州から撤退し、九州には、雇用を殆ど生まず地域にお金を落とさない太陽光発電設備しか残らなくなっているだろう。とても喜ばしいとは思えない事態だ。

 高い化石燃料を買わなくて済み国富の流出を防ぐことになるのだろうか。これも間違いだ。再エネの発電コストは高い。化石燃料による発電の2倍くらいのコストになる。要は、化石燃料は減るが、電気料金は2倍になるということだ。化石燃料の輸入が減っても、電気料金の上昇により、輸出はもっと減るだろう。簡単に言えば、電気料金で100万円損して燃料で50万円得する話だ。差引50万円の損だ。

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