2024年4月21日(日)

Wedge REPORT

2014年6月21日

 固定価格買取制度(FIT)の見直し等を議論する総合資源エネルギー調査会・新エネルギー小委員会(以下、新エネ小委)が6月17日から始まった。最も重要な論点の一つは、どのように太陽光発電(PV)の急増による賦課金の高騰を抑えるのか、である。PVによる賦課金急増に苦しんだドイツ等の欧州FIT先行国では、年間導入量もしくは買取総額に上限を設定しており、日本は前轍を避けるべきだとこれまで繰り返し筆者は指摘してきた(本誌2012年7月号2013年4月号2014年3月号)。

国民一人当たり38万円の負担

 しかし、もはや手遅れなのかもしれない。新エネ小委で示された資料によれば、3月末までに資源エネルギー庁に認定された再エネの設備は既に6900万kWに達している。今後の賦課金水準は、これら認定設備のうち実際に運転開始(運開)する設備量に依存するが、仮にこれが全て運転開始(運開)すると年間賦課金総額は1.9兆円である。買取期間は10~20年間続くため総額38兆円の国民負担による売電収入を再エネ発電事業者に既に保証してしまったことを意味する(図1)。これは国民一人当たり38万円の負担である。

非現実的な6900万kW

 6900万kWという規模になると、送配電線に接続したとしても、出力を抑制しなければならないかもしれない。このようなリスクは、FITのもとでは、再エネ発電事業者ではなく、国民が負うことになる。国が設備認定をしているため、再エネ発電事業者には、電気を売る権利が発生している。仮に送配電網に接続できず誰も電気を使えなくても、電力会社は再エネの電気を買い取りつづけるか、あるいは、そうでなければ、国と電力会社が損害賠償をしなければなくなるだろう。

 また、認定量の内訳をみると、10kW以上の非住宅用PVが92%を占めている。もちろんPVは温暖化対策にはなるが、日本のCO2を1%減らすために毎年1兆円を費やす計算になる。これは1トンのCO2を減らすのに10万円もかかる高価な対策である。

なぜ非住宅用PVだけでバブル発生?

 非住宅用PVのみバブル的な状況にあるのは、我が国の買取価格が高すぎることと、我が国独自の制度欠陥として、買取価格の適用時期がドイツ等のように運開時点ではなく、設備認定時点であることによる。前者の買取価格については、政府は、今年度の買取価格を32円/kWhまで下げているが、欧州のFIT先行国の買取価格に比べて、その高さは2倍以上となおも突出している。これでも事業者には十分な儲けがあり、認定設備容量はなおも増え続けるだろう。

 また、後者の制度欠陥の状況を示しているのが、繰り返される年度末の駆け込み認定である(図2)。我が国ではFIT買取価格が適用される条件が、エネ庁による設備認定を当該年度中に終えることにあるため、12年2月と3月は各1ヶ月間で530万kWと770万kW、13年の2月と3月は770万kWと2650万kWの認定ラッシュが発生している。これはドイツなどFIT先行国でも前例をみない未曾有の規模の駆け込みである。


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