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2014年6月21日

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朝野賢司 (あさの・けんじ)

一橋大学特任講師

1974年福岡県生まれ。京都大学大学院にて地球環境学博士号を取得。産業技術総合研究所バイオマス研究センター特別研究員を経て、2007年より電力中央研究所社会経済研究所主任研究員。2015年4月より現職(兼任)。17年より社会経済研究所上席研究員と現職を兼任。著書に『再生可能エネルギー政策論 買収制度の落とし穴』(エネルギーフォーラム社刊)など。

問われる効率性の観点に立ち返った政治判断

 懸念されるのが、空枠取りの横行による健全な事業者の締め出しである。空枠取りとは、買取価格の権利を先に獲得し、PVパネルの価格が安くなるまで意図的に運開を遅らせる、あるいは当初から発電事業は念頭になく買取価格の権利転売だけを目的としたブローカーを指す。空枠取りの横行は、健全な事業者の排除につながる。電力会社の電力系統への接続は申込順であるため、空枠取りは認定を受けると、買取価格だけでなく、系統接続の権利も獲得している。この結果、運開時点が早いか遅いかというプロジェクトの熟度が全く考慮されず、書類申請の申し込み順だけで、系統接続の優先順位が確定される。

 こうした事態を受けて、エネ庁は、12年度に非住宅用PVとして認定された約5000件について、「空枠取り」等の不正がないか報告徴収(実態調査)を実施し、先日144件を取り消した。今後は、土地取得と設備発注の2点について書類提出が無ければ認定取消とする方針を打ち出したが、未だに認定後の運開期限は設定されていない。3月の2650万kWもの認定量は、これら2点の書類提出への対応は事業者にとって何ら制約にはなっていないことを示している。

太陽光のFIT認定の一時的な緊急停止が必要

 今や他国の経験から学ぶという段階ではなく、我が国独自の制度欠陥を早急に是正することが必要である。まずは、この異常事態を止めるため、PVに対するFITの認定を一時的に停止すべきである。さもなければ、今後も認定が急増し、今年度末までにはさらに数十兆円の国民負担が上乗せされかねない。これは到底看過できない。現状は大けがをした状態であり、まずは血を止めなければならない。その上で、制度の欠陥をよく点検し、修正を施した上で再開すべきである。

 具体的には、既に認定された設備に対して、より一層の厳格な認定審査と取消の実施が不可欠である。同時に、PVの買取価格を大幅に切り下げるか、導入量に上限を設定し、買取価格の適用時期を現行の認定時点から、ドイツ等と同様に運転開始時点に変更すべきだ。

 FITを規定する再エネ特措法(表1)にも、経産大臣は必要があれば半年に1度の価格改定(3条1項)がうたわれており、10月から買取価格を見直すことは可能である。また、賦課金の負担が需要家にとって過重とならないこと(3条4項)、そして、経済事情に著しい変動が生じるおそれがある場合は買取価格を改定できることが規定されている(3条8項)。

 新エネ小委のオープニングにおいて、上田隆之・資源エネルギー庁長官は、「最小の国民負担による、最大限の再生可能エネルギーの導入」を明言された。FITは導入量と費用負担のバランスが重要である。出来るだけ少ない費用負担で、出来るだけ多くの再エネ供給を得る、効率性の観点に立ち返った政治判断が問われている。

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