2022年6月27日(月)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年10月23日

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 この原稿を書いている10月22日現在で、北京でのAPEC開催は約20日後に控えているが、習政権はすでに会議の成功に向けて全力を挙げて動き出している。

 たとえば10月13日に中国国内メディアの「網易財経」が伝えたところによると、APEC会議期間中の北京周辺の大気汚染を軽減するために、中国政府は11月1日から10日間、北京周辺の河北省の一部の鉄鋼企業の操業停止を決めたという。あるいは10月18日付の北京青年報が報じたところでは、会議期間中に、通常の警察・武装警察が治安の確保に総動員される以外に、100万人もの北京一般市民が治安維持のためのパトロールに動員されるという。何としてもAPECを成功させたいという習政権の意気込みが強く感じられる。

 どうしてそれほどまでにAPEC会議を成功させたいのか。当然、習近平主席の強い思いがあるだろう。今度のAPEC会議は、習主席が中国の国家元首として仕切ることになるが、彼にとっては国家主席になってから仕切る最大の国際会議であるから、どんなことがあってもそれを成功させなければならないのである。

 そして前述の「中華思想外交」の文脈からすれば、中国の主要周辺国の首脳たちが北京に一堂に会するこの国際会議は当然、習主席が「東夷・西戎・南蛮・北狄」の国々を相手に自らの「親・誠・恵・容」を誇示する絶好のチャンスとなる。彼にとってその時の北京はまさに、自分が「有徳の中華皇帝」として周辺国を「感化」して心服させた、という歴史的な場面を見せつけるための夢の大舞台となるのであろう。そしてそれはすなわち、彼が標榜する「親・誠・恵・容外交理念」の集大成となる一大イベントでもある。

日中首脳会談を必要としている習近平

 したがって、どんな対価を払ってもAPEC会議を成功させたいというのが習主席の偽りない気持ちであろうが、その中で、会議の参加者として日本からやってくる安倍晋三首相と会うかどうかが、習主席にとって大きな問題となる。

 習近平主席自身が掲げている「親・誠・恵・容外交理念」からすれば、北京にやってきた安倍首相を無視しいっさい会わないのはやはり難しいところであろう。というのも、「親・誠・恵・容」は習主席の周辺外交の普遍的理念であるならば、それこそ中国の重要な近隣国である日本に対しても本来なら、「親・誠・恵・容」をもって接しなければならないはずである。逆に言えば、もし日本というアジアの大国はいつまでたっても、習主席の「親・誠・恵・容」の理念に「感化」されずにして「化外の民」のままであれば、習主席の中華思想的「周辺外交」が完結したことにはならない。その場合、習主席の「徳」が十分に行き渡っているとはとても言えないだろう。

 つまり、11月に北京にやってくる安倍首相という「東夷」の国の「頑迷」な指導者が、まったく「感化」されていないような様子で、習主席に「拝謁」もしないようなこととなれば、習主席の「親・誠・恵・容外交理念」の集大成の場となるAPEC会議は不完全なものとなってしまい、習主席の肝いりの周辺外交は完結できないままとなってしまう。したがって習主席にとっても、日本の安倍首相が恭しく自分に「拝謁」してくるような場面がどうしても必要となってくるが、この「拝謁」の場面の実現はすなわち、日中首脳会談の実現であるのは言うまでもない。

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