要するに習主席自身、APEC会議における安倍首相との会談を必要とし、それを実現させたいのである。だからこそその地ならしのために、今年7月には安倍首相に近い福田康夫元首相との極秘会談に応じた。9月には、同じ太子党で自分の幼馴染みの李小林中国人民対外友好協会会長を「特使」として安倍首相の身辺に派遣したわけである。
もちろん習主席としては、安倍首相と会う条件としてはやはり、安倍晋三という人間が主席の「徳」に「感化」された印として、尖閣問題や歴史問題で何らかの目に見える譲歩をしてくれることが重要であろう。もし安倍首相が何らかの譲歩をした上で、さらに恭しい態度で拝謁してくるようなこととなれば、習近平国家主席にとっては万々歳の結果となる。しかしもし、「頑迷」な安倍首相が会談の実現と引き換えに譲歩することを最後まで拒否していれば、APEC会議開催の直前までに、「安倍と会うべきかどうか」で悩み続けるのは習主席の方であろう。しかしそれでも彼はやはり、会談の実現に傾く可能性が大である。「有徳な中華皇帝」となるのはやはり大変なことなのだ。
後は、首脳会談実現のために領土問題などで譲歩するかどうかは日本側の裁量となるのだが、筆者の私自身、安倍首相は習近平主席と会うだけのために日本の主権と領土保全にかかわる問題で譲歩するような愚を犯すことはないと信じたいところである。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。