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2014年10月30日

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香田洋二 (こうだ・ようじ)

ジャパンマリンユナイテッド顧問 元自衛艦隊司令官

1949年生まれ。72年防衛大学校卒業。海上幕僚幹部防衛部長、佐世保地方総監、自衛艦隊司令官などを歴任し、2008年に退官。09~11年、米ハーバード大学アジアセンター上席研究員。

米本土より劣る在沖海兵隊

 米軍が冷戦後のアジア太平洋地域の安定を支えてきたが、その役割は我が国駐留及び当地域へ展開する米軍部隊が担ってきた。ハワイ、グアムからアフリカ東岸までの広大な地域で、米軍戦闘部隊が駐留している国は日本と韓国だけである。在韓米軍は、米韓同盟の本質が対北朝鮮であることから北の抑止意義が高い反面、朝鮮半島に拘置されており、新戦略を反映した他地域への戦略的展開は困難である。

 「再均衡」(Rebalance)政策を中核とする米国のアジア太平洋政策に、真っ向から挑戦する中国の「近接阻止・領域使用拒否」(以後「A2AD」)戦略を受けて立つ米国のアジア太平洋安全保障戦略を支える柱が、在日および当地域へ展開する米軍部隊である。米国の再均衡政策と安保戦略を支える我が国の決意と自衛隊の能力は、アジア諸国から高く評価されている。日米同盟を基本とする我が国の政策と地政学的位置は当地域の安定の鍵である。

 残念ながら、再均衡政策の柱である対中抑止力の一翼を担う海兵隊の役割と意義は、我が国において正確に理解されていない。再配置計画推進過程において理解深化は必須である。

 筆者は4年にわたる米海軍での生活を通して、海軍と密接な関係にある海兵隊に関して同僚の海兵隊将校から多くを学んだ。その立場からすると、我が国一般の海兵隊に対する理解は不十分である。

 海兵隊は、軍艦内の規律維持と海外の国益保護を任務とする小規模な軍種として独立戦争前年に誕生した。一時の廃止期を経て19世紀半ばから米国のほとんどの戦争に参加し、ペリー提督来訪にも少数が同行している。2回の世界大戦、ベトナムから湾岸、更にはアフガニスタンまで多くの戦争に投入され、今日では米国の世界戦略における初動対応部隊となっている。

 海兵隊はMAGTF(マグタフ)と呼ばれる司令部、地上部隊、航空部隊及び支援部隊から成る自律作戦能力の高い部隊を編成して任務を遂行する。

 最大単位が遠征軍MEF(メフ)で師団規模の地上戦闘部隊と完全編成の航空団(戦闘攻撃機、垂直離着陸攻撃機、大〜小型輸送・攻撃ヘリ、電子戦機、空中給油機、輸送機等)及び支援部隊で編成される約4万人の部隊で、近年ではイラク戦争等の湾岸地域への対応の際に編成されている。

 1952年制定のダグラス・マンスフィールド法による3個MEF制をとる海兵隊はⅠ-MEF(以下「Ⅰ」)が西海岸のカリフォルニア州、Ⅱ-MEF(同「Ⅱ」)が東海岸のノースカロライナ州、Ⅲ-MEF(同「Ⅲ」)が日本に所在する。

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