Wedge REPORT

2014年10月30日

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香田洋二 (こうだ・ようじ)

ジャパンマリンユナイテッド顧問 元自衛艦隊司令官

1949年生まれ。72年防衛大学校卒業。海上幕僚幹部防衛部長、佐世保地方総監、自衛艦隊司令官などを歴任し、2008年に退官。09~11年、米ハーバード大学アジアセンター上席研究員。

 自衛隊の両用戦能力を構築するにあたり、海兵隊とは機能も運用体制も異なる陸海空自衛隊が保有すべき能力を明確にするべきである。そのうえで、海兵隊的機能である両用戦能力の整備が必要である。単なる海兵隊の一部能力導入だけで、有事に真に機能する島嶼防衛力とはなりえない。

 沖縄の地理的特性からⅢの当地域の安全保障への影響は圧倒的である。しかし、米本土所在のMEFが海兵隊の特徴を全て満足する「完全MEF」とすれば、在沖のⅢは、航空部隊がカネオヘ(ハワイ州:大・小輸送・攻撃ヘリ)、岩国(戦闘攻撃機、給油機)及び普天間(オスプレイ)と広範に分散し、地上部隊も一部が旅団規模でハワイに分駐した上に総兵力も小さい「減量MEF」といえる。

 この様なⅢであるが、台湾に加え、中国の強圧的対外政策の目標となっている南・東シナ海及び不安定な朝鮮半島との関係という天与の地政学的価値を有する沖縄に所在することこそ、当地域の安定における最大の戦略的意義であり、拡張主義を採る中国にとって重大な障害、すなわち極めて有効な抑止力となっている。

 しかし、即応部隊の中心となるMEUが1個に限られる等、I、Ⅱに比べ能力で本質的に劣るⅢに対する正確な理解が海兵隊再配置の出発点である。海兵隊戦闘部隊の一部及び家族のグアム、ハワイ移転と訓練の豪州ダーウィン及びグアムでの分散実施は、陸・空戦力が近傍にまとまって所在し、MAGTFとして緊密に一体化した質の高い訓練を実施するという海兵隊の根本理念に反する。

 本移転による在沖兵力の減少は、減量MEFの戦闘能力を更に削ることであり、機動展開等の部隊運用で補える限度を超える恐れがある。沖縄特有の厳しい訓練制約がもたらす戦闘力の低下は、訓練環境のよいダーウィン等で改善できることを勘案しても、現在の再配備・移転計画はⅢの戦闘・抑止力を許容限度の下限まで減ずるものと理解しなければならない。

 「オスプレイ飛行訓練のグアム移転」や「同飛行隊の佐賀空港への暫定移駐」は、①許容限界にあるⅢの構成部隊と訓練を更に分散させ、②分散した遠隔地における移動訓練が訓練効率と質の低下に直結し、既に下限にある抑止能力を遂に許容水準下に落とし込む恐れが大である。オスプレイ訓練のグアム移転等の追加提案は、少なくとも我が国から持ち出すべきものではない。

「偏重」議論の見直しを

 今後、「基地負担解消」のみの論議が続き、「抑止力維持」の視点が顧みられないまま再配備・移転計画が推進される場合、中国の強圧的な対外政策に「がっぷり四つ」に組み合う米政策の柱となる米軍、なかでも在沖米海兵隊の抑止力は大きく損なわれる。

 両案件の同時解決は簡単ではないことは勿論であるが、感情論から離れた論理的な取り組みが国民、特に沖縄県民に求められる。今日まで我が国と国民が享受してきた最大の価値である自由と民主主義に先鋭的に挑戦する隣国に正面から向き合う時、再配備問題で混乱し低下する海兵隊の抑止力は彼の国だけを利することになることを我々は銘記しなければならない。

  
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◆Wedge2014年10月号

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