2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年11月6日

 現在、中国の一人当たりの水資源は世界平均の4分の1といいます。中国は急速な経済発展を遂げるために、工業用の浄化システムを導入しないまま生産力だけを追求するなど、水資源を考慮に入れない産業政策を推進してきました。また、工業を支えるエネルギー産業(発電や石炭の採掘・加工)においても、水資源の約20%を消費していますが、それは、先進国の4~10倍に当たります。

 現在の中国の水資源の問題は、まず、管理体制が、複雑な縦割り・地域割りになっているとの指摘があります。水資源は、水利、環境、計画などの各部門によって管理されていますが、これが典型的な縦割り行政になってしまっています。また、一つの河川について、上流・下流、主流・支流で調和のとれた管理がなされなければならないのに、水量の分配、治水、汚染防止などが行政区分ごとに行われており、管理上の不一致が多く発生しています。さらに、同一地域内において、治水、灌漑、給水、汚水処理などが、ばらばらに管理されており、その結果、同一地域内でも農村と都市の利害などが調整されないことが少なくないようです。

 そして、中国の水の最大の問題が、需要の管理が行われていないことであるとの論説の指摘は、その通りです。水が不足しているのに、価格が安いため、工業用にせよ、民需用にせよ、節約のインセンティブが働きません。

 中国にとり、縦割り・地域割りの弊害を出来るだけ排した水資源の管理体制の構築と、適正な価格設定による需要調整が、水問題における喫緊の課題です。中国南部から北部に水を送ろうとしても、根本的解決策にはなりません。

 論説は、水価格の引き上げは政治的に難しいと指摘していますが、水不足がこれほど深刻な問題になっているので、大気汚染への強力な取り組みの例から考えても、指導部が危機意識を高め、政治的決断をして、管理体制の改善、水価格の引き上げの方向で、強権が発動される可能性はあると思います。ただ、それでも、水問題が中国にとってアキレス腱であることに間違いはないでしょう。

*関連記事:空気汚染より深刻な中国の“水”問題

  
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