阿川尚之・慶應義塾大学教授
息子が2人いるのですが、長男が小学校6年生のある日、「お父さん、京都へ連れて行って」と言う。理由を聞くと「私立中学を受験したいので、入学試験問題に出る寺社を、実際に見てまわりたい」というのです。
金閣寺、銀閣寺、北野天満宮、比叡山、それから奈良へ行って東大寺をまわりました。兄弟何ごとも平等でなくてはと考えて、次男が小学校6年生のときにも同じことをしました。
後年、結局2人とも京都の大学に進学しました。京都の大学しか考えなかったと言うのですが、小学生のときに一緒に新幹線に乗って旅をしたときの思い出が、影響を与えたのでしょうか。
それ以降も、大学へ進んだ息子たちは新幹線で帰省し、私も京都のある大学で教えるようになり、新幹線とのかかわりがさらに増えました。
東京から西へ向かう新幹線は、新大阪から岡山、広島、博多、さらに鹿児島へと延長されていったわけですが、自分が生きて来た、家族とともに過ごして来た歳月が、その時々の思い出が、どこかで新幹線と重なっている、新幹線の歴史と結びついている。そう感じています。
(プロフィール)
阿川 尚之(あがわ なおゆき)
1951年、東京都生まれ。米国ジョージタウン大学外交学部、同大学ロースクール卒業。ソニー、日米の法律事務所を経て、1999年から慶應義塾大学総合政策学部教授。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。