この熱き人々

2014年12月18日

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吉永みち子 (よしながみちこ)

1950年、埼玉県生まれ。85年、『気がつけば騎手の女房』で大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞。著書に『母と娘の40年戦争』(集英社文庫)、『怖いもの知らずの女たち』(山と溪谷社)、『試練は女のダイヤモンド』(ウェッジ)などがある。

 その結果、トライブ(族)がぶつかり合うラップ・ミュージカルという世界で初めての映画が生まれたというわけだ。

 「思いついた時は、すっげえなあ、こんなことまだ誰もやってないコロンブスの卵、早い者勝ちだって思いました。ロスのクラブで、何でアメリカがこれを最初にやらなかったんだって悔しがってるって聞きました。日本の映画界は、映画とはこうあらねばならないというのが強い。僕の映画はその中に収まらないから、こんなの映画じゃないって言われる。昔は、何とか評価の逆輸入をして自分のポジションを作るために、外国の映画祭命、みたいなところがありましたが、今ではもう全く気にしなくなりました」

最新作「TOKYO TRIBE」は世界初のバトル・ラップ・ミュージカルとして話題に
2014INOUE SANTA/“TOKYOTRIBE”FILM PARTNERS
配給:日活

創るために壁を壊す

 確かに、インディーズ時代から園の作品は外国の映画祭での受賞が多い。「TOKYO TRIBE」も2014年秋のトロント国際映画祭のオープニング作品として上映された。そのトロント国際映画祭では2012年に「希望の国」が最優秀アジア映画賞を受賞している。

 「希望の国」は、原発事故で20キロ圏内と圏外で分断された2つの家族を丁寧に誠実に描いた映画で、原発推進と反原発の対立構造の中で振り落とされていく人間の悲しみが息苦しくなるほど伝わってくる。

 東日本大震災の後、日本の映画界が報道やドキュメンタリーに任せるばかりで二の足を踏み、傍観者を決め込んでいる中、ただひとり震災直後の被災地でカメラを回して「ヒミズ」を撮ったのが園だった。「なぜ被災地を撮るのか」という問いに対して、「なぜ撮らないのか」と問い返している。

 被災者が辛い災害を思い出すからという理由をつけて、向かい合うことを避ける人が多い。思い出すということは忘れることができた人で、被災の現実を引きずって生き抜かなければならない人にとっては、思い出す過去ではなく厳然と続く進行形の苦しみや悲しみなのである。

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