2024年7月16日(火)

この熱き人々

2014年12月18日

 不条理という概念に対して抗するのではなく、不条理そのものに向かって闘わざるをえない人たちがどのように生きていくのかということを、「ヒミズ」と「希望の国」で園は真正面から深く問いかける。個人の内面の煮えたぎる思いを、性や暴力という吹き出し口で描くのも園子温なら、まるでローアングルの長回しのように這いつくばってストイックなまでに描き出すのもまた園子温なのである。

 「人のやらないことをやろうとすると、いろいろと壁があって大変ですけどね。でも壁を壊すと、壁で見えなかったものがたくさん見えますから」

 これまでどれだけの壁とぶつかってきたのだろうか……と想像してしまう。

 園にとっての最初の壁は、家族、とりわけ自我が目覚める幼少期に最初に立ちはだかった父の存在だったようだ。

 「園家って、どうも江戸時代に坊さんと尼さんが駆け落ちした家系らしい。でも両親はどっちも教師で、典型的な地方の教育熱心な家に育っちゃったからねえ。とにかくしんどい。10代までは親の重圧からどう逃れるかというのがテーマでした」

 足を組んだら怒られる。塀にもたれれば「カッコつけるな」。勉強机は常に監視可能な廊下。

 「赤いTシャツ着て帰ったら、『赤を着るとはどういうことだ! 堕落している!』って怒る親父ですから。やってられないでしょ」

 どうやら園家は、過激と超真面目が交互に現われるようで、祖父は自由気ままに生き、父親はそんな祖父に反発した結果、全面否定の正反対の姿が形成されてしまったらしい。両極端に見えるけれど、どちらに振れるにもトコトン振り切れる過激さが似ている。


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