こういった方たちの、「必要ない取材は不愛想にしてでもシャットアウトする」「自社が押し出したいことを一切譲らない。過剰に盛り込む」「取材依頼に対して上から対応する」などの特徴は、もしかしたら一部の広報担当者の中では重要で「デキる」条件なのかもしれない。ただ、取材を申し込み記事を書く側としては、そういう方たちよりも、普通にコミュニケーションを取れて、可能であれば少し機嫌よくやり取りしてくれる人の方がありがたい。同業者の中での「仕事がデキる」という評価は一面的だと思うし、「(戦略のない)キラキラ広報」と同業者から揶揄されていても、実はそういったタイプの方が外部からすると仕事しやすいということはあるのではないか。「(戦略のない)キラキラ広報」は自分を売ることに必死と叩かれているが、独りよがりな赤字を入れることで自我を発散させている困った広報もいるのではないか。
山本氏は、「会社やサービス、プロダクトのことを考えて汗かいている歴戦のお姉さま方」と書くのであれば、そういった広報の方はどういう仕事ぶりなのかをぜひ具体的に書いてほしかった。
※ちなみに、塩対応の方はごくごく一部で、だいたい8割以上の広報の方には気持ちよい対応をしていただいていると思う。
本当にあった恐ろしい広報の話
ここからはちょっとした小ネタなので、時間のある方だけに読んでいただければと思う。
筆者が20代中盤でフリーライターとして活動し始めたころ、あるテレビ局に関連する本を制作するために、そのテレビ局の広報担当者と連絡を取っていたことがあった。この広報担当者の女性が、大変恐ろしかった。
まず、現場で顔を合わせると汚いものを見るかのような目でこちらを一瞥し、挨拶をしても無視。会社に電話すると必ずいないので携帯電話に連絡するとガチャ切りされる。メールを送っても返信はなく、一方的な要望を伝えるメールだけが来る。「その件は上司の○○に問い合わせてください」というメールが来たので連絡すると、その上司からは「それ○○(広報担当者)ちゃんの仕事だから○○ちゃんに聞いてよ」とややキレられる(ちなみに、一般社会では「ちゃん付け」されるような年齢の人ではない)。ある作業をそのテレビ局で行うために出向くと、無言で広い会議室に連れて行かれた後、恐らく「そこへ座って作業しろ」という意味で、あごで指図(慣用的表現ではなく、リアルにあごで指示)。しばらくして他の社員から「そこ使うので出てください」と言われたものの、広報担当者がどこにも見当たらないため代わりの作業場がわからず、廊下にあった簡易的な椅子に座って作業をした。
当時はなぜこんな仕打ちを受けるのかわからず、「社会ってこういうものなのか」「ドラマをつくるテレビ局だからこんなドラマみたいなイジメがあるのか」「こんな舐めた態度を取られる私にも問題があるのかも……」などとショックを受けたが、今となってみれば、その後あれほどひどい社会人には出会ったことがないので、最初のうちにああいった目に遭っておいて良かったと思うし、こうして話のネタにもできるので良かった。
ちなみに数年後、その広報担当者と一緒に仕事をしていた女性と偶然出会ったときに、彼女の名前を出した途端「それは大変でしたね……」と言われたので、相当問題のある人だったのだと思う。さらに別ルートから、彼女はコネ入社で「使えない人材だから広報に回された」と聞かされたのだが、使えない人材を、なぜ外部と接する部署に置くのだろか。大人の社会はときとして本当に不思議だ。
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