2022年7月6日(水)

オトナの教養 週末の一冊

2014年12月19日

»著者プロフィール
著者
閉じる

中村宏之 (なかむら・ひろゆき)

ジャーナリスト

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスク、調査研究本部主任研究員などを経て2017年4月より読売新聞東京本社メディア局編集部次長。『御社の寿命』、『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』、(いずれも中央公論新社)など

 鉄鋼業で大成功したのはラクシュミ・ミッタル氏だ。筆者がロンドン勤務の時に取材に行ったダボス会議でばったりミッタル氏に会ったので、握手して少し話をした記憶があるが、その時の眼光の鋭さが忘れられない。さらに、米マイクロソフトの最高経営責任者(CEO)はインド出身のサトヤ・ナデラ氏である。

 優れたインド人はインドにこだわらず世界で活躍し、その多くがアメリカだという点にもうなずかされる。著者の指摘するように、どうすれば異文化の中でうまく生き抜けるかを重視するインド人気質には、グローバル人材が生まれる要因があり、インド人としてのアイデンティティに固執しないことで、他国の人から受け入れられやすいというポイントはやはり大きいのだろう。

 アメリカに留学しているインド人が約10万人であるのと比べ、日本に留学しているインド人はわずか約500人という現実には、いかにインドがアメリカを向いているのかを痛感させられる。世界に広がる3000万人とも言われる「印僑ネットワーク」にも驚くばかりである。

ITの進展と根深い汚職問題

 ITの進展で賄賂が減少し、また海外で活躍するインド人の往来が増えることで、かつてのインドにはびこっていた汚職体質が変わったという指摘も興味深い。ただ、新しいインドの顔がクローズアップされる一方で、いまだに国民の3人に一人が電気のない生活をしており、貧富の差は大きい。そして汚職はいまだ根深く残っており、メスを入れることは容易でないという著者の指摘は胸に響く。

 本書で惜しむらくは、全体を通じて図版がわずか一つしかなく、地図や年表などがあれば、もっと立体的にインドのイメージが伝わったのではないかという点だ。ただ、インドに育った普通の人の目で見たインド社会の描写は非常に新鮮で、参考になる点ばかりである。日本との間にも往来が増えるにつれ、最近は映画などのインド文化も日本で多く紹介されるようになってきた。間違いなく将来に大きく変わってゆくであろう「すごい国」の姿を、今のうちによく知っておくための好著である。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る