――そういったご経験から、今回のもとになったコラムを書いたんですか?
傍士:その後、06年から8年間、Jリーグの理事を務めさせていただきながら、本書の元となったコラムを07年から書いたんです。このコラムに書いたことは、全国各地での講演の際にも、いろいろとお話させていただきました。その中で、サッカーと聞くと自分とは関係がないと思う人もいますし、むしろ嫌いな人や野球のほうが好きな人もいます。かといってスポーツの話だと言っても自分にはスポーツは関係ないという人もいます。でもそうではなく、人の集まるお祭りが日常にあるんですよということを強調してきました。
――そういった観点からだと興味をもつ人も増えそうですね。
傍士:そうなんです。この本の中でもアウェイツーリズムの章がありますが、地域の観光活性化につながるということをお話するんです。Jリーグは基本的に週末に行われますから、週末の休みを利用し、アウェイゲームに地元から多くのファンが応援に駆けつけます。もし街中にスタジアムがあれば、アウェイチームのファンは、街の商店街などでお金を落としますから、観光や交通に携わる人々にも、アウェイチームのファン=観光客として魅力的ではないでしょうか。
街中にスタジアムを建設するなんてとんでもないと思われる方もいるかもしれませんが、実際にこうした動きは各地で起きています。たとえば、私は去年の6月に山形市の市議会と商工会議所に招かれ、別々に講演をしました。山形市では、街中にスタジアムを建設しようという動きがあります。これは、サッカー関係者が言い出したのではなく、地元の商店街連合会がこぞって商店街の活性化のために動いているんです。
また、来季からJ2に昇格するツエーゲン金沢というチームがあります。来年の3月に北陸新幹線が開通し、このチームがJ2に昇格したことで、多くのアウェイチームのサポーターが観戦に訪れるでしょう。
――他のスポーツでもこういった動きは見られるのでしょうか?
傍士:プロバスケットボールのbjリーグ・新潟アルビレックスBBは、新潟県長岡市役所とアリーナなどが一体となった「長岡シティホールプラザアオーレ長岡」をリーグで使用しています。また、栃木市役所の1階には東武百貨店が入っています。そのようにどんどん垣根を超えていっているんです。これから甲府や富山、金沢、福島などスタジアムを作らなければならないチームはたくさんあります。サッカーなどのスポーツの話からでは動かない人たちも、街づくりや地域の活性化の話からすればいいと思うんですよ。