――ただ、スタジアム建設には莫大な費用がかかります。
傍士:最初のうちは、スタジアムは小さくてもいいと思うんです。それこそ3000人規模の観客席数で。それを増設出来るような設計にしておくことが重要です。日本のスタジアムは増設できるように設計されていないところが多いんです。たとえば、ドイツ・ブンデスリーガのフライブルクは、1903年のクラブ設立当初観客席数は1000だったのが、93年に2万5000人収容に増設しました。90年かけて大きくしていったのです。
日本の場合、そういったモデルとなるようなクラブやスタジアムを作ることで、自治体が地方創生に目を向けてもらえばと思うんです。そうすることで、自分たちの街にクラブが出来て、自分の街を愛するという風景ができると思います。
ドイツでの経験から、財源や権限の自立を取り戻すのと等しく、意識の自立を取り戻すのが重要だと感じました。そこにつなげるためには日常の風景が重要で、小さい時から親や祖父母と応援に行くクラブがあれば、それだけで全然違うと思いますし、自分の街が一番だと思えれば、わざわざ東京へ出て行く必要もないのかもしれません。そういう意味では、スポーツの果たす役割は社会的ですよね。
また、銀行員時代の経験から、サッカーのためというよりも観光のためとしたほうが予算は取りやすいと思いますね。
――最後にどんな人に本書をおすすめしたいですか?
傍士:こんなふうになりたいや、こんなことしたいけれど悩んでいる人ですね。そのためには、100年も最初の1日、1分からなんです。ヨーロッパのビッククラブであるユベントスだって、最初は地元の高校生が集まってクラブハウスを作るところから始まっているんです。小さいものを作り、みんなで育て上げていけばいいと思いますね。
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