2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2015年1月7日

参加国のメリットと先進国の立場

 アジアの発展途上国にとってのメリットは明確である。経済発展のためにインフラ建設は必須であり、新たな資金の出し手は国籍を問わず歓迎であろう。さらに既存の国際機関との対抗上、AIIBからは緩い審査及び返済条件で低利融資が得られたりするとの期待もあろう。

 他方、先進国の立場は微妙である。自国の経済へのプラス効果は見込まれるとは言え、AIIBへの出資決定にはその意義を国民に説明する必要がある。しかし、ADBと重複しないか、OECD等で共有された援助理念や透明性の確保はできるのか等について、14年夏の準備段階では確信が持てず、AIIBは中国自らの利益のため国際金融機関を複製して、既存秩序に挑戦する意図があるのではないかとの疑惑を払拭する材料も十分でなかった。

 日本の立場はさらに難しい。日本は米国とともにADB最大出資国であり、歴代総裁を輩出してきた。他方でAIIB提唱者である中国とは長らく首脳会談も開催できず、世界を心配させるほどに相互信頼関係と対話が失われていた。

 そのような中で、AIIBは中国が50%近くを出資、本部は北京、トップも中国政府が派遣と、中国の「面子」ばかりを優先したユニラテラルな代物として設計され、後戻りができないところに来ており、正式設立は時間の問題である。AIIBの今後を注視していきたい。

  
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◆Wedge2015年1月号より

 


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