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2014年12月26日

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弓野正宏 (ゆみの・まさひろ)

早稲田大学現代中国研究所招聘研究員

1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。

中国が「北朝鮮を放棄」したらどうなる?

 李氏は、中国がもし「北朝鮮を放棄」したら3つの可能性がありえると予測する。それは北朝鮮が中国以外の第三国の懐に抱かれるだろうということ。北朝鮮が政治や経済、軍事上の共同包囲網の圧力により崩壊させられるだろうこと。そして北朝鮮は孤立無援状態に陥り、やけっぱちになって戦争に走り、朝鮮半島が再び戦火に包まれる可能性があるということだ。

 どの結果も中国にとって望ましくなく、海からの勢力によって半島全土が制圧され、歴史的大失敗を再び犯す可能性は小さくないという。日清戦争(中国では甲午戦争と呼ばれる)の主な原因は日本と清朝が朝鮮半島を取り合ったことによるもので、その余韻が残っている。李氏によると米国は日本に取って代わり、海洋勢力として朝鮮半島の秩序を作りだしているが、中国が北朝鮮を「放棄」したら、米国は朝鮮戦争で得られなかった戦略的利益を獲得できる。中国は朝鮮戦争時に志願軍として兵士を派遣しており,戦闘で40万近くの犠牲者を出したといわれ、毛沢東も息子、毛岸英を亡くしている。「北朝鮮放棄」を主張する人には戦略的判断ミスがあり、むざむざ米国にプレゼントするようなもので、傷が癒えないうちに痛みを忘れたかのようだというわけだ。

 中国の7大軍管区のうち台湾や対日作戦を担う南京軍区の副司令員を勤めた王洪光将軍はそもそも中国に北朝鮮を放棄する選択肢はないと一刀両断する。王将軍は李氏が指摘する「一部の戦略問題の学者が中国は北朝鮮を放棄すべきだと提案しており、問題は非常に深刻だ」という見方に賛成できないと主張する。王将軍は李氏による「中国と朝鮮は二つの独立国家」という言い方には異存がないとしながらも「両国の根本的利益は一致する」という点には賛同できないという。中朝それぞれ国家利益があるためだ。特に北朝鮮は核を保有しようとしているのに対して中国はその放棄を求めており、国家利益の違いが際立っている。

「北朝鮮のために自国の利益を損なうことはない」

 王将軍は、中国は北朝鮮のために自分の利益を損なう必要はないと言い切る。北朝鮮が核を保有することですでに中国の国境地域で核汚染の深刻な危機を招いており、庶民の安全を守るために中国政府は北朝鮮の核保有を非難しなければならないだけでなく、北朝鮮に中国への脅威を及ぼさないように核施設を遠ざけることを要求する合理的理由があるというわけだ。

 この点において中朝両国の根本利益は一致するだろうか。もし、北朝鮮が核を保有すれば、日本や韓国の核保有を刺激しかねない。李氏は、もしこの小さな地域でロシア、中国、北朝鮮、韓国、日本がそれぞれ核を保有し、更には米国の核が加わったら東北アジアは安寧たりうるのかと疑問を呈する。

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