王将軍は、中国は原則問題で基本的立場は不変と主張する。中国は北朝鮮が中国の国家利益を損ねるやり方には反対してきたが、これを北朝鮮放棄とみることはできないという。ただこれまで北朝鮮の「尻拭い」があまりにも多く、専門家はこの点をはっきり理解すべきで、今後は必ずしも「尻拭い」すべきではないと言い切る。つまり王将軍は、中国は北朝鮮が起こす紛争や混乱に対して自らの利益を犠牲にしてまで巻き込まれるべきではないと主張している。まさに中国にとって有事に北朝鮮を援助すれば損害を軽減できるのか、それとも「巻き込まれない」ようにすれば損害を最小限化できるのか、という判断が迫られているわけだ。
李氏は、北朝鮮は社会主義政治体制で、中国の地政学的に代替できないというが、王将軍はこの点にも異を唱える。北朝鮮は早々とマルクス・レーニンを放棄していて無産階級政党でも、社会主義国でもないため、イデオロギー面で中国といかなる共通点もないとしている。北朝鮮はもともと1972年に「憲法」でマルクス・レーニン主義を労働党の中心的思想に位置づけ、活動指針にすると規定したが、1980年に金日成同紙の革命思想であるチェチェ思想を唯一の指導方針とすると変更した。つまり王将軍によれば北朝鮮はこのときマルクス・レーニン主義を放棄したのだ。もはや、中朝両国には国家利益による結びつきしかなく、社会主義政党間の同志関係など存在しないというわけだ。
中国と北朝鮮の間には「中朝友好協力相互援助条約」(1961年締結)があり、「一旦、締結の一方が武力攻撃を受け戦争状態に陥った際にはもう一方の締結国が速やかに全力で軍事或はそのほかの援助を行う」と規定する。つまりこの一項が北朝鮮に対する軍事的保護を確約している。
しかし、王将軍によれば条約に規定されたもう一つの規定、すなわち「締結国はそれぞれ両国の共同利益に関する全ての重要な国際問題について協議を行う」という一項が見落とされがちだという。なぜなら北朝鮮が核保有に関して中国と協議をしたことがないためだ。北朝鮮は中国の根本的利益を侵害しており、両国で一致した根本的利益があるという李氏の意見には賛同し難いというのだ。北朝鮮を戦略的「盾(原文では屏風と称している)」と見なすのも無理があるという。グローバリゼーションが進み、情報化時代において地政学面でも軍事面でも北朝鮮の重要性は大幅に低下しているためだ。