2024年4月26日(金)

メディアから読むロシア

2014年12月26日

「これには、弾道ミサイル警戒衛星、偵察衛星、航法衛星、通信及び中継衛星が含まれる。これにより、我々はロシアの安全保障を大きく強化する。(中略)技術者、設計者、試験担当者、軍の皆さんの働きに感謝申し上げる。皆さんは、自らに課せられた全責任を負い、その任務の達成へと一歩近づいた。皆さんの成功は、宇宙開発の分野における名だたる大国の一角をロシアが占めていることを示したものである」

 アンガラ打ち上げ成功を高く評価したのはプーチン大統領だけではない。かつて国防大臣を務めたこともあるイワノフ大統領府長官も、「今日、ロシアはただアンガラを手に入れたのではない。事実上、あらゆる軌道にペイロード(貨物)を投入する能力を手に入れたのだ」と述べて、その意義を強調した。

自律的宇宙アクセス能力の回復

 ロシア政府首脳部が口をそろえるように、今回のアンガラ-A5打ち上げ成功の意義は極めて大きく、しかも多岐にわたる。まず指摘したいのは、7月の第1回発射試験で打ち上げられたのは、アンガラ・シリーズで最も小型のアンガラ1.2であったが、今回打ち上げられたアンガラ-A5はURMを5本も束ねた重量級バージョンだった点である。

 アンガラ-A5は、地球低軌道に対して最大24.5tのペイロードを投入できるほか、静止軌道に対しても人工衛星を打ち上げる能力を持つ。現在、静止軌道への打ち上げ能力を有するロシア製ロケットはプロトン-Mだけだが、アンガラ-A5はこれを代替することが可能だ。

 プロトン-Mはすでに性能面で旧式化しつつある上、コンポーネントの一部にウクライナ製部品を使用しており、さらにカザフスタンのバイコヌール宇宙基地からしか打ち上げられない。つまり、完全に独立した宇宙アクセス手段とは言えない。

 実際、プロトン-Mは有害なヒドラジン系燃料を使用することから、カザフスタン政府から打ち上げ回数の削減を求められるなどのトラブルが発生している上、ウクライナ危機で部品供給が滞る可能性もある。

 これに対してアンガラ・シリーズは「ウクライナに1コペイカも渡すな」を合言葉に開発されただけあって、コンポーネント単位まで完全国産とされている。さらに、軍のプレセツク宇宙基地や、極東のアムール州に建設中の新宇宙基地「ヴォストーチュヌィ」からも打ち上げが可能であるため、ロケット本体についても、宇宙基地についても、外国に依存する必要が一切なくなる。

 これまでも地球低軌道への打ち上げならば国産のソユーズで賄うことができていたが、アンガラの実用化により、ロシアは静止軌道も含めた完全に自律的な宇宙アクセスを回復できるメドを立てられるようになった。

 さらにプロトンで問題になった燃料についても、アンガラではケロシン系燃料を使用するようになっており、環境負荷は大幅に低下した。


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