財閥ドットコムによると、10大財閥の2013年の売上高合計が全体に占める比率は24.8%、当期純利益だと41.9%に達した。中でも、サムスンの主力企業であるサムスン電子の存在感は圧倒的だ。サムスン電子の2013年の当期純利益は、1社だけで全体の15.5%を占めた。韓国経済の中では財閥が圧倒的な存在感を持ち、その中でもサムスンが他を圧倒しているという構図だ。
3世への世襲が進行
サムスンでは昨年5月、李健煕(イ・ゴニ)サムスン電子会長(73)が心筋梗塞で倒れて以降、李会長の長男である李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長(46)が事実上の経営トップとなる体制への移行が進んでいる。李健煕会長の父が1938年に韓国南東部・大邱でサムスン(三星)商会を設立しているから、李在鎔氏は3世経営者ということになる。
他の財閥でも2010年ごろから、創業者の孫世代がグループ会社の社長や副会長といった要職に就き始めた。韓国の財閥は、日本の敗戦によって植民地支配から解放された1945年前後の創業が多い。創業から70年ほど経って、3代目経営者の時代になってきているということだ。ナッツ・リターン事件の主人公である大韓航空の前副社長も、創業者の孫である。
解放前後の混乱や朝鮮戦争(1950~53年)という動乱期、戦後復興の中で、必需品である砂糖や小麦粉、セメントなどを扱う企業が成長した。その典型がサムスン商会であり、そうした企業が後に財閥の母体となっていった。
朴正煕が「作った」財閥
朴槿恵(パク・クネ)大統領は2012年12月の大統領選で勝利した1週間後、日本の経団連に相当する「全国経済人連合会(全経連)」を訪問した。朴氏はこの時、韓国の大企業が成長できた裏には「多くの国民の支援と犠牲があり、国からの支援も多かった。だから、韓国の大企業は国民企業の性格が強い」と強調した。
朴氏の言葉の背景には、韓国特有の事情がある。韓国の財閥は、朴氏の父である故朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が作り、育てたようなものだからだ。
1961年に軍事クーデターで政権を握った朴正煕氏は、1979年に殺害されるまで、民主化運動を弾圧する独裁政治を行う一方で、世界最貧国レベルだった韓国に高度経済成長をもたらした。韓国国防大の許南●(ホ・ナムソン、●は「さんずいに省」)名誉教授は、「朴正煕大統領は権力掌握後、安保と経済を最優先課題とした。一言で言えば『富国強兵』だ」と話す。
しかし、当時の韓国は貧しかったから、内需主導の成長など望むべくもない。必然的に輸出志向の成長戦略を取るしかないのだが、輸出産業を興すための資金も、技術もなかった。