2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年12月24日

 11月14日付の台北タイムズ紙の社説は、中韓自由貿易協定(FTA)の台湾への影響は大きいが、経済部(省)が指摘するほど深刻なものではない、と述べています。

 すなわち、中韓自由貿易協定の実質的な合意により、中韓両国のみならず、台湾も大きな経済的影響を受けることになる。

 台湾経済部は、中韓自由貿易協定による台湾経済への影響は6,500億NTドルに上り、台湾のGDPを0.5ポイント下げるとの推定値を発表した。

 確かに、中韓自由貿易協定は、台湾に対して大きな影響を与えることになると考えられるが、経済部が発表しているほど深刻な状況にはならないであろう。

 経済部によると、ディスプレイパネル製造業が最も大きな打撃を受け、石油、鉄鋼、繊維、工作機械、ガラスや自動車などの工業部門が後に続く。昨年、ディスプレイパネル製造業は、5,092億NTドル相当を中国に対して輸出している。経済部は、今後3年間で、そのうちの1,090億NTドル分が韓国に移されると推計している。

 が、実際、昨年、台湾の工作機械工業が16%の損害を被ったのは、急激な円安のせいである。工作機械に対する中国の輸入関税は約9%であるのに対して、円の下落は30%であった。今回の中韓自由貿易協定による影響よりも、円の急落による影響がはるかに大きいにもかかわらず、経済部は何の措置も取れなかった。

 中韓自由貿易協定が効力を発揮するのは、両国の議会の承認を経てからであり、関税は5年から20年を掛けて段階的に撤廃される。また、自動車や自動車部品工業の規制は撤廃されない。従って、経済部の発表は、単に国民を怖がらせるためのものであるように見える。

 中韓自由貿易協定が台湾に大きな影響を与えるのは間違いないが、それを無視するのも、誇張するのもいけない。台湾は、経済の自由化に向けて努力するとともに、中国との間に、現在ある条項を変更して、新たな財・サービス貿易協定を締結すべきである。

 政府は、産業への影響を評価するにあたって、明瞭、且つ簡潔でなければならず、また、対策を用意するべきである。また、協定に署名する前には必ず、国民に対して、影響や対策の説明を行なう必要がある。


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