2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年12月24日

 台湾政府は、両岸サービス貿易協定締結の際のひまわり学生運動や社会運動から、何も学んでいないようである。国民の危機感を煽り、野党に反撃するために、中韓自由貿易協定を利用しようとしている。しかしながら、国民に基本的な情報を正しく伝えることができなければ、墓穴を掘ることになるであろう、と述べています。

出典:Taipei Times ‘Ministry exaggerates FTA effect’(November 14, 2014)
URL:http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2014/11/14/2003604373

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 中国と韓国の間でFTA(自由貿易協定)が締結された結果、台湾が不利な影響を蒙ることは確かですが、それを過大に評価することは間違いです、と台北タイムズが述べています。これは、現実に即した適切な指摘であると言えます。

 FTA締結の結果、中韓の間では、5年から20年かけて段階的に関税は撤廃されることとなりましたが、そのことをそれほど深刻に受け取る必要は無いこと、また、台湾のディスプレイパネル製造の最近の業績不振などは、中韓の貿易の影響というよりは、円安の影響を受けた点が多いことなどは、一般によく知られています。

 他方、台湾当局としては、中国との間のサービス貿易協定が本年3月の学生デモ(「ひまわり運動」)をきっかけに頓挫し、物品貿易協定の話し合いも進展する状況にないので、中韓FTA協定締結の悪影響を過大なくらいに強調しようとする事情があります。

 日本にとっての課題は、台湾の中国依存度を減らす意味からも、台湾のTPP加盟を促進し、日台間で長年の懸案となってきた日台FTAを締結することです。とくに、FTAについては、従来、日台間で関税、投資などの面で多くの措置が取られてきたので、それらの蓄積の上にFTAを結ぶことを検討する必要があります。日台FTAは実質的にも象徴的にも日台関係の強化に役立つでしょう。

 中国としては、自らがアジアにおいてFTAなどを進める構想を示しはじめているので、日台間でFTAが結ばれることについて従来ほど強く反対することは出来ないのではないかと考えられます。

  
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