2024年11月23日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2015年2月3日

 今のすう勢から見ると、本格的なバブル崩壊はまさにこの2015年に起きる可能性が大であるが、それが現実に起きてしまえば、中国経済全体は一体どうなるのだろうか。

 今まで、不動産業は中国経済の支柱産業と呼ばれてきた。たとえば2009年の1年間、土地の譲渡や住宅の販売などによって生み出された不動産関連の経済価値の総額は7.6兆元に上るという試算がある。それは、当年度の中国のGDPの33.5兆元の2割以上を占めている。09年からも不動産投資の伸び率はずっと経済全体の伸び率の倍以上を維持してきたから、GDPに占める不動産業の比重は今でもそう変わっていない。しかし今後、バブルの崩壊に伴って不動産業が「全体的に衰退」となれば、中国経済の受ける打撃は成長率の1、2%の低減という程度のものでないことは明々白々である。

内需拡大も絶望的

 不動産バブルが崩壊して「支柱産業」としての不動産業が衰退してしまうと、今まで不動産業の繁栄にぶら下がってきた鉄鋼やセメント・建材などの基幹産業がいっせいに沈没するのは避けられないであろう。不動産投資低減のマイナス効果は、今でも既に不況に陥っているこの一連の産業の低迷に拍車をかけることになるからだ。

 実際、中国国家統計局と中国物流購入連合会が2月1日に発表した今年1月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は、前月に比べて0.3ポイント低下して49.8となり、景気判断の節目となる50を2年4カ月ぶりに下回った。不動産バブルの崩壊が始まる中で、製造業全体の衰退はすでに鮮明な傾向となっているが、今後、バブル崩壊がより本格化していけば、中国経済の土台となる製造業の沈没は必至のすう勢となろう。

 製造業が沈没すれば、それに支えられている雇用は大幅に減り、よりいっそう失業の拡大が予想される。しかも製造業全体の業績不振の中で従業員の賃金水準がさらに下落することも考えられる。それがもたらす致命的なマイナス効果はすなわち、中国政府が経済成長率の失速に歯止めをかける役割を多いに期待している内需の拡大がますます不可能となることだ。失業が拡大して賃金水準が下がってしまうと、今後の国内消費は縮小することがあっても拡大することはまずない。

 しかも、不動産バブルの崩壊は別の側面においても中国の消費拡大に大きな打撃を与えることとなる。今後、不動産価格が大幅に落ちていく中で、不動産を主な財産として持っている富裕層や中産階級はその財産の多くを失うことが予想される。しかし財産が失われた後でも高いローンだけが残る。中国政府が内需拡大の主力として期待しているのはまさにそういう人々であるが、彼らがこのような苦境に立たされると、中国の内需拡大はますます絶望的なものとなろう。


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