退職代行サービスについては、理屈上はこうなる。
労働契約は、双方の同意による。労務を提供することと引き換えに賃金が支払われる。労働者に退職の意思があるなら、その意思は尊重されなければならない。
この点は、労働者が使用者に直接意思表示する場合も、退職代行を利用して意思表示する場合も同じである。その多くは弁護士ではない退職代行業者は、単に退職の意思を伝えるだけなら、非弁行為にあたらない。
会社の側としては、退職業者の発言に非弁行為相当の業務が含まれているなら、そのことを伝えて、交渉を拒否し、従業員本人と退職条件について直接交渉することもできる。しかし、非弁行為でなく、単なる退職意思の伝達なら、それを拒否することはできない。
退職代行サービスとブラック企業
退職代行サービスには、功罪のうちの「功」の部分は確実にある。未払い残業、ハラスメントが横行する、いわゆるブラック企業の場合、そこから労働者を解放する点は、退職代行業の社会的意義である。
業者を使われて従業員が次々に辞めていく会社は、そもそも労働条件が劣悪なのであろう。退職代行サービスが今後も普及するなら、ブラック企業は存続できなくなる。それは、労働者個人にとってだけでなく、産業社会にとってもプラスであり、そこに退職代行業のはたす社会的使命があるともいえる。
履歴書タトゥーとしての短期離職
功罪の「罪」もある。多くは若い労働者に、履歴書に二度と消せないタトゥーを彫ってしまう点である。産業社会とは、学歴社会である以上に、職歴社会である。