2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2015年2月16日

 中沢さんはスービックでの勤務経験があり、現地に進出している台湾や日系の中小企業の事情にも明るかった。新さんは語学学校で英語のレッスンを受けたり、現地に進出している中小企業に話を聞くことは、海外での販路拡大を目指す仲間にも役立つのではないかと考えた。そこでシリコンバレーの展示会で出会い意気投合した2人に企画をもちかけた。

 工作機械の部品加工を手がける大善(新潟県長岡市)専務の大宮丈範さん(36)、機械工具の商社であるユーエム(茨城県東海村)専務の川崎裕弥さん(31)だ。

 大宮さんは自分が経営を引き継ぐに当たって「次の時代に会社をどのような姿にしていきたいか」ということを考えていた。それは社員に夢を与え、その子どもたちが入りたいと思うような会社にすることだ。しかし、それも日本に仕事を残さなければ実現することはできない。「そのためには海外に出て行くしかない」と、新さんに賛同した。川崎さんも「大げさかもしれないが、日本から製造業自体がなくなっていくのではないか」と感じていた。国内市場が縮小していけば当然商社の仕事もなくなる。

視察ツアーを企画した新専務。スービックにて

 問題意識を共有し、3人の地域の仲間をそれぞれ誘った。だが、なかなか参加者は集まらなかった。広い会場を用意して視察ツアーの説明会を企画したが、来場者は1人だけ。「何を得られるんですか?」と厳しい質問が飛んだ。それでも、自社のプレゼンを英語で行うことが海外に販路を開く第一歩であること、そして進出している台湾企業などの話を聞くことができると説得した。「何とかしなければ」という意識はあっても、実際に行動に移すほどの危機感はないという現実も知った。

 結局集まったのは13人。参加費は1人につき16万円かかる。会社の補助を得る参加者もいたが、大宮さんや川崎さんを含め大部分は自腹だ。しかし、厳しい質問で詰め寄った説明会の来場者が名を連ねているのを見たときは格別に嬉しかったという。


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