2024年4月25日(木)

炎上?感動?ネットで話題のニュース

2015年2月27日

 絶対寝坊できないときにやってしまった……。誰しも一度や二度は経験があるだろう。公共交通機関を担う身になると、それがニュースになってしまう。重いミスとして叱責を受けたであろう2人の駅員に思いを馳せると、共感の気持ちが湧いてくるのも分かる気がする。

 もうひとつの例は、少し背景が根深い事件だ。昨年8月、岐阜県美濃加茂市の公園で飼育されていたヤギ2頭が盗まれ、ベトナム国籍の男3人が逮捕された。男らは「友人の誕生日を祝うためにヤギを盗み、食べてしまった」と供述。さすがに非難の声が多かったのだが、ネットの一部では「許してやれよ、と思ってしまう」といった書き込みがされていた。

 この事件は今年に入って公判が始まり、ヤギを盗んで食べるに至った驚きの背景が明かされている。報道によれば、被告の一人はベトナムの自宅・土地を担保に多額の借金をして来日した。家族に裕福な暮らしをさせるためだ。しかし就職先の農業会社では、当初聞いていた条件とは異なり低賃金で過酷な労働に従事させられた。この会社を逃げ出し、生活に困窮した結果の事件だったという。被告の証言は同情の念を超えて、外国人農業実習生の待遇問題に絡み話題となっている。

(参考:『朝日新聞デジタル』 全文の閲覧には無料会員登録が必要)
http://digital.asahi.com/articles/ASH2D7RCMH2DOHGB015.html?_requesturl=articles%2FASH2D7RCMH2DOHGB015.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASH2D7RCMH2DOHGB015

匿名だからこそ優しくなれる?

 「日本社会の不寛容化」が指摘されるようになって久しい。政治の話題では左右ともに感情的な言葉で互いを罵倒し、海の向こうでテロリストに危害を加えられると自己責任の声が上がる。不用意な発言はすぐに「炎上」するため、企業は発信する言葉を慎重に慎重に選ばなければならない。匿名で言いたい放題に振る舞えるネットは不寛容な社会の縮図のように言われる。それは一面では事実なのだろう。

 しかし、罪を働いた人やミスを犯した人の事情を思い、同情する声が拡散されていく様子を見ていると、ネットだからこそ表れる「寛容さ」もあるのだと感じる。もちろん万引きや窃盗は許されるものではないし、遅刻というミスによって大きな実害を被る人もいる。「情状酌量」を勝手に議論することはできない。だから実名でかばうことははばかられるが、匿名だからこそ優しくなれるということもまた、ネットの力なのかもしれない。

 板チョコ万引き事件のツイートには「バレンタインデーの習慣をやめてしまえばいいのでは?」という突飛な意見もあった。バレンタインのレイアウトが目立つ売場の前で、67歳の男は孤独な思いを引きずっていたのだろうか。取り調べで語った動機が本心なのかは確かめられないが、その背景にどんな事実があったのかは、知りたいと思う。

  
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