2024年12月11日(水)

Wedge REPORT

2015年3月9日

 海洋保護をうたう過激団体シー・シェパード(SS)が米国、オーストラリアに続き、欧州を第3の拠点にしようとしている。団体創設者で、国際刑事警察機構(ICPO)に赤手配(身柄拘束要請)されているポール・ワトソン容疑者(64)は昨年7月、米国からパリへと逃亡。フランス政府が拘束要請を事実上、無視する中で今年2月にパリ在住のロシア人女性と結婚し、フランスに腰を落ち着けた。

 一方、支部があるオランダでは今年1月に団体史上最高額の約830万ユーロ(約11億円)の資金を受け取ることが決定。SSはこの資金を元に日本の調査捕鯨を実力阻止させるための「ドリームシップ」(夢の船)を購入する計画を明らかにした。さらに、デンマーク・フェロー諸島では地元のイルカ漁に圧力をかけているほか、英国ではマグロ漁妨害訴訟で、SSが「勝訴」する事態も起きている。日本側が効果的な手段を打ち出せぬ間に、SSは反捕鯨国の多い欧州で着々と勢力を拡大、余力を蓄え、来期の南極海捕鯨妨害への準備を進めているのだ。

SSの年間予算に匹敵する莫大な寄付金

 今年1月、オランダ発のSS関連ニュースは永田町・霞ヶ関界隈の水産関係者を驚かせた。シー・シェパードが南極海の保護のため、オランダの宝くじ団体から830万ユーロの寄付を受け取ることが団体公式サイトで発表されたのである。 

 シー・シェパード・グローバルのCEO、アレックス・コーネリーゼンがアムステルダムで開かれた寄付金授与の表彰式に出席し、「この資金のおかげで、南極海を保護する活動を次の段階に引き上げることが可能となる」と宝くじ団体関係者に感謝した。

南極海で日本の調査捕鯨船に体当たりするシー・シェパードの妨害船=2013年2月(提供:日本鯨類研究所)

 オランダ人のコーネリーゼンはワトソン容疑者と長らく行動を共にした団体の最高幹部の1人。かつて、和歌山県太地町のイルカ漁に対する威力業務妨害で和歌山県警に立件された経歴を持ち、南極海の調査捕鯨妨害でも妨害船の船長を務めるなど、日本の水産関係者の間でも「暴れ者」との悪評が高い。

 この宝くじ団体は2007年以降、継続的にSSに対して高額の寄付を提供していた。これまでの資金提供の総額は1550万ユーロ(約20.3億円)にも上る。

 SSのことを「世界の環境保護のために従事するフェアな団体」と評価し、今回も1977年に創設されたSSの歴史上で最高額の資金を贈ることを決定した。830万ユーロはSSの年間予算にも匹敵する額である。


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