先月の拙稿(「北極に軍事基地復活 中国をけん制するロシア」)では、近年、北極海の権益を巡るグローバルな争いが顕著になってきていること、そしてロシアが軍事基地を復活させるなど、中国をはじめとした諸外国への牽制の動きを強めていることを述べた。
だが、9月からまた北極海で新たな問題が生じ、結果、ロシアとオランダの間の国際問題にまで発展している。
グリーンピース活動家の逮捕事件
9月18日に、ロシア沿岸警備隊はバレンツ海のプリラズロムナヤ海上石油プラットフォームによじ登った国際環境NGO・グリーンピースの活動家の船に威嚇射撃し、活動家を逮捕するという事件が起きた。
プリラズロムナヤは、バレンツ海の一部であるペチョラ海のロシア北部海岸から60キロの沖合に位置する。同地の開発プロジェクトは、ガスプロム・グループが進めているが、ロシアが開発する初めての北極圏海底油田であり、2011年にペチョラ海の広大なプリラズノムノエ油田に据え付けられた。1
北極圏には未発見の石油、天然ガスを初めとした多くの天然資源が眠っていると言われているが、その環境面の安全性や商業的な観点からの採掘可能性については、国際的に多くの疑問が寄せられている。
そのような中、グリーンピース活動家が同プロジェクトの採掘への抗議行動として、掘削リグに登ったわけである。逮捕された活動家は、グリーンピース所有の砕氷船「アークティック・サンライズ」に乗っていた。そして、同砕氷船から5隻のボートがリグに送られ、2人が放水を受けながらも、自分たちの体をプラットフォームにロープで結びつけて登り始めた際に、砕氷船をリグから引き離すために威嚇射撃が行なわれたという。リグに登った2人の活動家は即時逮捕された。
その後、同砕氷船は、9月24日に北極圏の港町ムルマンスクに曳航され、乗船していた18カ国2出身の30人の活動家もバスで捜査委員会の地方本部に連行され、数時間事情聴取された後、拘置所に収容された。
1:しかし技術的な問題のために操業開始は遅れており、ガスプロムは今年の末には原油の汲み上げを開始し、2019年には生産のピーク、すなわち年量600万トン(日量12万バレル)の生産が達成される予定としているが、具体的な展望は見えていないようだ。ガスプロムの石油部門であるガスプロムネフチが、同地の開発免許をガスプロムから取得すると考えられているが、同社は、同プロジェクトへの投資額を2000億ルーブル(約60億ドル)と想定しているが、その半分は既に消費されているという。
2:アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、英国、カナダ、デンマーク、フィンランド、フランス、イタリア、オランダ、ニュージーランド、ポーランド、ロシア、スウェーデン、スイス、トルコ、ウクライナ、米国