2024年4月24日(水)

解体 ロシア外交

2013年11月1日

 この事件について、ロシア連邦保安庁(FSB)は、同砕氷船の船長が不法行為の停止を拒否したために、やむなく、警告のために弾丸が船舶に当たらないように、4回のAK-74アサルトライフルで威嚇射撃を行なったと説明している。FSBはまた、母船にも走行を停止するよう命じたものの拒絶されたため、別に4度砲撃したと述べている(なおグリーンピース側は11回の砲撃があったと主張している)。

 他方、グリーンピースは、「プリラズノムナヤは大量の資金が注ぎ込まれているにもかかわらず、北極圏の石油を安全に掘り出す保障が備わっていない」と抗議の理由を主張する。グリーンピース側は、付近にはホッキョクグマ、セイウチやアザラシの生息地となっている3カ所の自然保護区があるが、生産が開始されれば原油流出の危険性が高まるとして、ガスプロムの2014年末までの操業開始を阻止しようとしているのである。実は、グリーンピースは2012年8月にも、クミ・ナイドゥ事務局長が主導する形で、同じ施設で、同様の抗議行動をしていた。

 なお、ガスプロムとガスプロムネフチはコメントを拒否した。 

及び腰になる石油企業も多く

 実際、深海での資源採掘の技術は未だ確立されておらず、まだ模索状況である。そのような背景もあり、原油価格の高止まりや温暖化による北極海の氷の融解により、北海の資源への関心が高まったのはごく最近のことだ。エクソンモービル、ENI、スタトオイルなどの石油メジャーの多くは北極海開発に関する協定をロシア国営石油会社のロスネフチと締結しているが、それらのほとんどは2020年代以後に生産開始予定であり、この成功の可否がロシアの石油大国としての地位を決するといわれている。

 だが、グリーンピースをはじめとした環境保護の立場をとる各種団体や個人は、生態系への影響と、原油漏出の際の汚染除去の困難さから、抗議の姿勢を強めている。

 そのため、石油企業の間に、高いコストと事故のリスク3 、さらに反対運動の高まりなどが相まって、同地の開発に対して及び腰な姿勢が目立ってきたのも事実であり、止まっている計画も少なくない。

 一方、北極圏の気象の変化がいずれ、政治家と企業幹部を乗り気にさせるという主張もあるし、ロシアのみならず、ノルウェーも今年8月にロシアとの境界論争が妥結した北極海東部の鉱区の開発権を公募するなど、北極海開発計画は確実に動いている。

3:2010年のBPの子会社ディープウォーター・ホライゾンのメキシコ湾における原油流出事件(作業員も11人死亡)は、石油会社にとって海底油田開発における事故の悪しき前例となっている。


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