2024年11月21日(木)

Wedge REPORT

2015年3月9日

 このニュースを知った、南極海への渡航経験が何度もある捕鯨関係者は私の取材にぽつりとこうもらした。

 「われわれはもう一頭もクジラを捕れなくなってしまうでしょう…」

 オランダの宝くじ団体の11億円の寄付は、日本の調査捕鯨自体をも停止に追い込む可能性があることに、日本社会の多くの人々はまだ気付いていない。

フェロー諸島では
追い込みイルカ漁の抗議キャンペーンを

 一方、SSは昨年夏、デンマークのフェロー諸島へも「400人以上」(ワトソン容疑者)の活動家を送り込み、追い込みイルカ漁の抗議キャンペーンをやってのけた。ワトソン容疑者はその結果、フェロー諸島の漁師たちが捕獲するクジラやイルカを大量に減らしたと宣言した。

 フェロー諸島は教訓をもとに、地元議会で活動家の立ち入りを禁止する法整備を行おうとしたが、デンマーク本議会で「渡航の自由を認めた欧州連合(EU)の規則に反する」として却下された。

 ワトソン容疑者は1月末、リベラル系ネット新聞ハフィントンポスト英国版にこのフェロー諸島でのキャンペーンについて論文を寄稿した。そして、デンマーク議会がSS活動家締め出し法案を否決したことを評価し、「卑劣な捕鯨に抗議するため、2015年も活動家は法的な障害なしで、フェロー諸島に出向く」と宣言した。

 SSは2010年夏、地中海に妨害船を展開させ、マルタの水産業者が保有するクロマグロのいけす網を切り裂き、損害を負わせる事件を起こした。マルタの水産業者は同じ英連邦である英国ロンドンの裁判所に民事訴訟を起こし、損害賠償請求を求めたが、今年3月、SS側が勝訴したとの報道が出ている。

 結局、SSの過激な行為が違法かどうかが争われたのではなく、地中海での出来事での英国における法的な管轄権はないという判断が下されたようだ。一時期、劣勢に立たされたSSはこの勝訴についても、自らの妨害活動の大義名分が認められたと支持者らにアピールしている。

 黒色のものを白色と言い張り、自らにこそ正義はあるという宣伝手法は、団体のカリスマであるポール・ワトソン容疑者が得意とする団体運営の戦略の核であり、だからこそ、過激活動や違法行為を働いたとしても、ここまでつぶされず、むしろ団体を成長させてきたと言える。


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