――今でこそ多くの弁護士が登録されていますが、最初は弁護士さんもおっかなびっくりだったのではないですか。
元榮:最初は確かに、「ネットに名前出して大丈夫かな」とか、「ネットでくる依頼者は面倒なケースが多いのではないか」という心配もあり、弁護士の先生方にご理解いただくには時間がかかりましたね。しかし、ネット経由で実際につながってみると、すごく魅力的な案件が多かったりします。次第に弁護士の先生方も、弁護士ドットコムは顧客開拓に活用できるということに気付き始めて、登録者が少しずつ増えてゆきました。そこに気付いてもらうまでは、繰り返し繰り返し新しい考え方を説いているような感じでした。最初は「なんだそれ」というところから入って、「いずれご理解いただけるようになります」ということを訴え続けました。弁護士ドットコムの使い方セミナーを開催しようと多くの弁護士の先生方に案内を送ったんですが、ご参加いただいた方はたった一人ということもありました。もちろん、お一人でも一生懸命ご説明をさせていただいた結果、登録せずには帰れなそうという雰囲気にもご理解をいただき、ご登録してもらったこともありました。
――下積み時代の歌手みたいですね。
元榮:売れない時代が長かったですね。実質赤字8期なので、3年間ぐらいは見向きもされない時期が続きました。それでも、これからはインターネットでつながる時代なのではないかということをある程度ご理解いただいて、ネットで弁護士がつながる時代のルールみたいなものを大阪弁護士会が制定してくださったのです。これが2007年12月です。よりどころがようやく生まれたという感じでした。
――ビジネスの観点からは、弁護士の世界はある種「空白地帯」のように見えていましたが、そこに元榮さんが風穴を開けたという印象です。弁護士に依頼したい人が多くいる一方で、アクセスの仕方がわからない。弁護士の側はお客さんが欲しいのに、待っていてもなかなかこないし、逆に弁護士からアピールする方法もよくわからない。そこに広告掲載という形で両者を引き合わせた、そこがビジネスモデルの勝利ではないかとおいます。
元榮:その通りです。昔から依頼者の方は弁護士との接触機会を高めてもらいたいというニーズがあったわけです。一方で弁護士の側は定価のないハンドメイドのスタイルでずっと続くと思っていたので、お客様主導であるネットの世界には出てこなかった。しかし2010年代に入ったら状況は変わると思いました。弁護士が2倍になると競争の激しさも2倍になります。双方のニーズが高まることを見越して、最初に仕組みをつくっておいて、先行者優位を確保しようと思いました。