2024年11月22日(金)

エネルギー問題を考える

2015年3月23日

 また、再エネの大半が太陽光と風力という不安定な電源であることにも注意が必要だ。埋め合わせは、すぐに出力を上げることのできる火力発電が行うのだが、「バックアップ火力の稼働率は低くなるので、事業者にとってみれば投資効率が悪い。日本は20年をメドに電力自由化を進めるとしている。自由化された電力会社はそんな電源への投資は避ける。ドイツでは実際に火力発電の稼働率低下と投資抑制が起きている」(NPO法人・社会保障経済研究所の石川和男代表)。

 「大量の余剰電源があったスペインや、連系線で隣国と電力をやりとりできるドイツといった恵まれた国でも、再エネが20%を超えると様々な問題が起きた。日本は今からリスクに対応しておくべき」と澤昭裕氏は言う。「再エネ30%」の非効率性と非現実性を直視すべきである。

省エネ「深掘り」の危険性

 再エネよりさらに問題が大きいと思われるのは省エネだ。

 再エネの比率を高く見せるには、分母となる電力需要の総量が小さければよい。最終的な安倍首相の掲げるCO2目標を野心的に見せるためにも、基準となる電力需要は小さければ小さいほど楽だ。こういった思考から、とまでは言わないが、小委においても「まずは省エネをできるだけ深掘りしてからエネルギーミックスを考える」というプロセスが当然のように受け止められている。

 地球環境産業技術研究機構の秋元圭吾グループリーダーによると、「そもそも基準になっている30年の電力需要想定が、前提に置かれている年1.7%の経済成長率に比べて低すぎる。GDPが1単位成長したときに電力需要がどれだけ伸びるかを示す弾性値を計算すると0.5。震災直後のような異常事態を除いた、過去の平常時の弾性値は1程度だ」。これは、右のグラフ上の赤の実線の傾きが、非常に小さいことに表れている。資源少国の日本が電力需要を低めに想定するのは、エネルギー安全保障の観点からも危険だ。

 さらに慶應大学の野村准教授によると、この基準となる電力需要想定に、省エネ対策を最大限積み上げた「省エネ対策後」と呼ばれる需要想定が、経済への影響が大きすぎるのだという。


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