4月からの再生可能エネルギーの買取価格が決まろうとしている。
2月24日、経済産業省の有識者会議「調達価格等算定委員会」が示した2015年度の買取価格案(委員長案)によると、太陽光発電(10kW以上、通称メガソーラー)は1kWhあたり29円(税抜き)。これまで3年間、委員長案のとおり決定しており、この価格で決まることは濃厚だ。
29円は高すぎる。
固定価格買取制度(FIT)が始まった2012年度は40円。その後、36円(13年度)、32円(14年度)と切り下げられてきて今回29円だから、順調に切り下げられてきたようにも見えるが、まったくもって切り込みが甘い。
直近のドイツの価格は9ユーロセント(1ユーロ=135円で計算して約12円)、スペインやイタリアに至っては買取を停止したままだ。他のFIT導入国で高いところを探しても15ユーロセント(同20円)程度。なぜ日本の電力消費者だけが世界標準の2倍も負担しなければならないのか。太陽電池パネルやパワーコンディショナーなど、機器類は世界的に流通している。日本の国民だけが高掴みさせられているようなものだ。
29円は6月までで、7月からは27円となる。これはFIT法制定時に、国会での“改悪”により、制度開始から3年間(12年7月~15年6月)は特に事業者の利益に配慮するという附則が追加されたからだ。40円から毎年4円ずつ切り下げてきた流れから言えば15年度は28円。ちょうど28円を挟むように29円と27円にしたのだろう。なんと安直なことか。27円でも世界標準から見れば高すぎる。
業界からは「日本は欧州と違う。高コストだから仕方がない」といった声も聞こえてくる。しかし、世界中で日本だけなのだ。3年間も異常な買取価格で制度運用してきてコストが下がらないなら、もはや太陽光をこれ以上普及させる意味がないのではないか。
さらに恐ろしいのは、「すでに手形は振り出されてしまっている」ことだ。40円や36円の価格が認定されたまま、運転開始していない太陽光が山のようにあるからだ。運開率はなんと約2割に過ぎない。いまさら29円や27円に切り下げても遅いのだ。これから残り8割の設備が「高い買取価格」という権利を掲げて登場してきてしまう。
電力中央研究所社会経済研究所の朝野賢司主任研究員によれば、FITの設備認定が14年度、つまりこの3月で終了するという極端な仮定を置いた「FIT廃止ケース(注1)」でも、年間賦課金額のピークは2.6兆円、累計賦課金額は53兆円に及ぶという。これだけの膨大な金額が、すべての国民(電力消費者)から、再エネ事業者や、太陽光パネルを敷き詰めた土地の地主に移転されることに合理性はあるのだろうか。