2024年7月17日(水)

ペコペコ・サラリーマン哲学

2009年8月10日

 戦争だけは、絶対に繰り返してはならないと思います。

 9歳のころから高校生のころまでは、原爆を落としたアメリカはけしからん、約束を破って攻めてきたソ連は許せない、そう思っているだけでした。

 でも大人になって考えてみると、そう簡単な話ではないのです。人間はそもそも好戦的な面を本能的にもっています。それは、歴史ドラマや歴史小説が、よく戦国時代や幕末を描いていることからもわかります。人は、平和な時代の話より、戦争での人殺しの時代の話を残念ながら好みます。私は、人と人とが殺し合う戦争をテーマにした映画、テレビ、小説が苦手です。

 人間の本性や歴史の事実は、いつも見据えておくべきです。でも一方で、戦争の苦しみが計り知れません。日本人は平和主義だから、非武装で丸腰にしていれば誰からも攻められないとは、とても思えませんが、軍備を必要以上に強化していけば、暴走して逆に戦争を誘発する可能性があります。

 日本は戦後、敗戦国として世界に「ペコペコ」することで平和を保ってきたのだと思います。極端な平和主義にも、極端な力の論理にも、どちらの「極端」にも振り切れずに、知恵を使ってうまくやってきたと思います。

 私は、「人間誰しも自分がいちばんかわいい。自分をかわいがるためには、偉ぶったりせずに、ひたすらペコペコするのがよい」という「ペコペコ哲学」(参考:このコラムの第一回の記事)を推奨していますが、アメリカも、傲慢な態度を少し改め、「ペコペコ哲学」を実践してくれればいいのに、と思っています。

三宅一生氏の勇気

 今年、オバマ大統領はプラハで核廃絶を願う歴史的な演説をしました。これはこれで、すばらしいことだと思います。が、もっと踏み込んで、原爆の日に、そうでなくとも、できるだけ早く広島を訪問してくれたら、もっとすばらしいのですが・・・。

 広島を訪問して、原爆を落としたことを率直に謝る。そんな「ペコペコ哲学」をアメリカが実践してくれる日がきたら、こんなにうれしいことはありません。

 ブランド「イッセイ・ミヤケ」を作った、デザイナーの三宅一生氏が、ずっと言わないできた被爆体験を明かし、オバマ大統領に、広島に来てほしいと手紙を出したというニュースにふれ、私は心から感動しました。

 われわれ日本人はアメリカと一緒になって自由を大事にして、でも一方で、アメリカの乱暴さを牽制する。そんな役割を果たしていきたいと思います。そのことによって、絶対に戦争をしないということを守り続けていけたらと心から思います。

 今年(2009年)の春、テポドンが飛んで、日本中・世界中が大騒ぎになりました。テポドンが一発、日本に落ちれば、日本はまた軍国主義化してしまうかもしれません。ヒトラーのような独裁者を求めてしまうかもしれません。

 そういう私も、テポドンが落ちて、子どもが殺されてしまったら、やっぱり武器を持って立ち上がってしまうと思います。でも、自分の腕が落ちてしまうくらいだったら、立ち上がらない。そうありたいと思っています。

 

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