世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年4月22日

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 抑止の筋力は退化した。集団自衛が何を意味するのか、NATOは忘れたのかもしれない、と述べています。

出典:David Ignatius,‘Back to the future in Putin’s Europe’(Washington Post, March 17, 2015)
http://www.washingtonpost.com/opinions/back-to-the-future-in-putins-europe/2015/03/17/6c8dbb94-cce9-11e4-8c54-ffb5ba6f2f69_story.html

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 イグネイシャスの指摘は、おおむね的を射ています。ロシアに武力行使の用意があり、西側が事態の平和的沈静化を求めるとの非対称性がある限り、西側は押されて、後退する一方となります。経済制裁は軍事力の代替にはなりません。ウクライナへの致死的兵器の供給に踏み切る時が来たように思われます。

 プーチンは機会主義者であると見るべきです。つまり、機会があれば押し、抵抗が強いと引っ込むのが彼のやり方です。バルト諸国への圧力、カリーニングラードでの軍事活動を見ると、プーチンには、そういう傾向があります。クリミアをとれば満足するとか、東部ウクライナを実質的支配下に置けば満足するとは思われません。

 致死的兵器の供与はロシアからのさらなる攻撃を誘発するとの批判があります。確かに、そういう面はあるかもしれませんが、その危険と今の傾向を放置した時に出てくる危険を比較すると、前者の方が小さいでしょう。今の情勢を放置すれば、より大きな戦争になってしまう危険があります。ロシアの脅威には今明確に対峙する方がよいでしょう。ロシアが反発すれば、それに見合う対応でやり返すほかありません。

 INF条約は冷戦終結に大きな役割を果たしました。これが崩壊することの意味はイグネイシャスの言う通り重大ですが、中国が中距離核ミサイルを増やす中、米ロだけ自制するのは問題というロシアの主張も全く理不尽というわけでもありません。条約は順守しつつ、今後どうするかを米ロで話し合う必要はあるでしょう。

 NATO軍とロシア軍が対決した場合、いまでもNATO軍の方が優位です。その点、イグネイシャスのNATO軍の能力評価は低すぎます。軍事費でもNATO諸国がロシアを大きく凌駕しています。国民の理解を含む、ロシアへの脅威に対抗する政治的意思の有無が一番の問題でしょう。

 ロシアというのは臆病なところもある国です。力関係の計算に長けた国で、強く出れば引っ込み、自爆攻撃するような国ではなく、そういう国民意識もありません。

 オバマがイラン核交渉、シリア情勢で対ロ配慮を必要としていると考えているのであれば、それはピント外れと言わざるを得ません。

  
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