2月14-20日号の英エコノミスト誌は、ウクライナには武器よりも十分な資金を与え、西側の価値と制度の実現を助けるべきである、と提言しています。
すなわち、ロシアは経済が縮小し、通貨急落と経済制裁に苦しんでいる。しかし、プーチンの観点から世界を見れば、勝っているのはプーチンの方だ。
プーチンの目的はNATOを分断、無力化して集団安保体制を粉砕し、西側を押し返すことにある。今思えば、プーチンのアサド支援やグルジア侵略等も個別の偶発的動きではなかったのかもしれない。
今後、プーチンは、EU・NATO加盟国のバルト諸国を脅かす可能性がある。
プーチンの究極の標的はEUとNATOである。プーチンが軍隊よりも恐れるのは西側の制度や価値であり、彼は、それらの拡大を阻止し、内部崩壊を促すことを狙っている。プーチンは、エストニア等で親ロ反政府運動を煽る。もしNATO諸国がその沈静化に動かなければ、NATOの相互防衛の約束は信用を失い、同盟は崩壊するだろう。
一方、プーチンは、ロシア国民の幸福を犠牲にすることを何とも思っていない。抗議する者は迫害し、国民の不満はプロパガンダで煽ったナショナリズムで宥める。
差し迫った問題は、今回の停戦が失敗したら、ウクライナに武器を与えるか否かだろう。支持派は、武器供与によってプーチンの戦闘継続のコストが上がると言う。しかし、プーチンは大量の戦死者も許容する。従って、武力で抑止しようと思うなら、西側は、プーチンよりもさらに強力な武器で対応する必要があるが、これについてNATOの意見は割れている。
それよりも、西側は、ウクライナに、国家再建と彼らの夢の実現に必要な資金を急ぎ与えるべきである。発表されたIMFの資金援助はほんの手始めでなければならない。
EUやNATOに加盟した旧ソ連邦諸国を安心させ、支援することも急務だ。バルト諸国にはNATO部隊を配備し、プーチンに対し、同盟国はバルト諸国を守ると、はっきり表明すべきである。
また、ミンスク合意後も制裁は強化すべきだ。ロシアの国会議員や政府関係者は全員とっくに制裁対象にすべきだった。武器よりも制裁のほうが結局強力であることがいずれ判明するだろう。