2024年12月5日(木)

田部康喜のTV読本

2015年4月22日

 TBS金曜ドラマ「アルジャーノンに花束を」は、ダニエル・キースの世界的なベストセラーが原作である。欧米で幾度も映画化され、日本では2002年にドラマ化されている。

 原作の翻訳や映画、ドラマによってあらすじを知っている、観客に今回はどのような結末に誘ってくれるのだろうか。

 脚本監修の野島伸司は「高校教師」(1993年)や「家なき子」(1994年)などで、現代社会を描く問題作を、ドラマの世界で問うてきた。「アルジャーノン」の第1回(4月10日)と第2回(4月17日)は、現代日本の病巣がえぐり出されて、予想外の結末を予感させる。

理想と圧力のなかで進むべき道を誤る研究

 アルジャーノンは白いハツカネズミである。脳生理科学研究センターが研究の成果を上げて、知的な行動が格段に進化した。実験室の迷路を巧みに走って、完走までのタイムを向上させていく。この成功を人間の治療に適用しようというのが、実験室の目標になっている。

 研究センターの部長である、蜂須賀大吾(石丸幹二)は医薬品メーカーの援助を受けて研究を続けている。アルジャーノンの成功を早期に人間に適用することを求められている。蜂須賀は音楽を志していた息子を、鉄道のプラットフォームから転落する事件で亡くしている。息子が持っていたバイオリンのケースが人に触れたことから、いざこざになったのである。

 アルジャーノンの知的な進化を人間にも適用できるなら、知恵によって問題を解決できる穏やかな社会が生まれる、と蜂須賀は理想を描いている。

 製薬会社が資金の提供をたてにして、早急な製品化を迫るなかで、理想と圧力のなかで蜂須賀は進むべき道を誤っていく。

 研究員の望月遥香(栗山千明)もまた、蜂須賀を秘かに愛しながら、研究チームのなかで気に入らない小久保一茂(菊池風麿)を排除するために、アルジャーノンをわざと外部に逃がして、飼育係の小久保に責任をとらせようとする。

 理化学研究所のSTAP細胞をめぐる事件や、内視鏡による手術の失敗によって多数の死者が出たと推定されている国立大学病院、海外から先端医療の利用者を拡大する医療センターでの肝臓移植の異例の失敗の数々……


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