エネルギーヴェンデを進めるために、ドイツ国民の負担はどのくらい大きくなるのか、ドイツの経済成長はどこまで低くしなければならないのか等々、私だけでなく、誰もが関心や興味を抱くことだろう。日本でも、11年3月の東日本大震災における東京電力福島第一原子力発電所の事故を契機として、脱原発や再エネ拡大への志向が強まっているからだ。
ドイツでは連邦政府や州政府、消費者団体や産業団体、再エネ発電施設の計10カ所に足を運んだ。
閣僚の記者会見ではない。政策を進める現場の担当者へのヒアリング調査だ。結果は、想定の範囲内外いずれも豊富であった。(以下、「 」内は訪問先での彼らのコメントの引用)
「東西統一より高くつくが、それでもやり抜く……」
ドイツで再エネ拡大路線が敷かれた直接のきっかけは、原子力を嫌ってというより、CO2排出量と石油依存の低減。一般的に、再エネは化石燃料よりも高いが、これに対して「化石燃料の価格が上がれば再エネに競争力が備わったはずだが、実際には化石燃料の価格は上がっていない」と、当初から誤算があったとの吐露。
正直、この見方には驚愕した。原油価格の将来見通しを立てるのが事実上困難であることは、歴史が証明している。ドイツは、原油価格が上がることを期待しながら再エネ拡大路線を走り始めたのだろうか? だとしたら、ドイツはかなり甘かったわけだ。
日本も他人事ではない。米国発のシェール革命を過大評価し、シェールガスの増産によって日本に輸入されるLNG(液化天然ガス)の価格が安くなっていくだろうと、今の日本政府は淡い期待を抱いている。我々も大甘だ。
後述するが、再エネ拡大によって電気料金が上がり、ドイツ国民が大きな負担を背負うようになっている。「エネルギーヴェンデを実現するためのコストは、東西ドイツの統一コストよりも高くつく」と言いながらも、「ドイツ国民はそれでもやり抜く」として、今後もエネルギーヴェンデに邁進する決心に揺るぎは見せない。
どの訪問先でもそう感じた。この自信はどこから来るのだろうか?
00年に始まった再エネの固定価格買取制度(FIT)もあって、CO2排出量は00年から14年で11.6%減、再エネ発電比率は00年の6.6%から14年には26.2%になった。こうした実績が、彼らの自信の源なのかもしれない。大きな国民負担を伴っての、であるが……。
(THOMAS TRUTSCHEL/GETTYIMAGES)